ハーメルン
真剣で居合ってカッコいい! 
七話 川神学園での初日

 
「ボク、修行なんてしたことないよ」
 
「ええぇぇぇ!?」
 
 頬を掻きながらキョトンとした顔でそう答えた刃に、一子は驚きの声をあげる。
 その意外すぎる返答は、今朝の決闘拒否事件以上の衝撃であり、隣で黙って話を聞いていた大和ですら、驚愕を露わにしている。
 
「でも、お姉さまに勝った人が、一度も鍛えたことが無いなんて……」
 
「本当に何もしてないんですか?もしかして、誰にも言えない秘伝の修行法だったりとかで、言えないとか」
 
 まさかそんなはずはない、と質問する二人に対して刃は、今までの記憶を思い出すように目を閉じ、答える。
 
「んー。そう言われてもなぁ。小学生の頃に3日だけ道場に通ったことはあるけど、それ以外にプライベートで体を鍛えた記憶は無いなぁ……」
 
「そうなんですか……」
 
 修行とかそんなのは仰々しものじゃなくて、趣味で居合ならしてるんだけどなぁ、と彼女等が望む答えを心の中で思い浮かべる。
 その趣味でやっている居合が、他人からすればどれだけ常軌を逸した修行法なのか、刃は気がついてはいなかった。彼にとって修行とは、痛く苦しいものであり、楽しくて好きでやっている居合いは修行にはカウントされなかったのだ。
 
 完全に気落ちしてしまった一子に、刃は申し訳なさそうに話しかける。
 
「えっと、要件ってのはそれだけかい?ならボクはもう行くね」
 
「あ、ちょっと待ってください!」
 
 これ以上長話をしても時間の無駄だと判断した刃は、話を切り上げて帰ろうとする。そこで、今度は大和の方が刃に対して要件をいや、提案をした。
 
「宮本さん川神に来たばかりで、ここら辺のことよく知らないですよね?」
 
「まぁ、そうだね」
 
「じゃあ良ければ、メアド交換しませんか?観光案内とかしますよ」
 
 大和は軍師を自称している。腕っ節に自信のない大和は、常日頃から大勢の人間からメールでやりとりを行い、情報を収集していた。そうすることで、事前に相手の癖や特徴、情報を読み取り策を考えるのだ。
 
 今回行われた東西交流戦の結果は単ひとえに、西に対しての情報が足りなかったせいであると、大和は思っている。
 だからこそこうして、少々強引であるものの西の人間であり、要注意人物である刃との連絡先を交換しておきたかったのだ。
 
「いや、初対面でメアドはちょっと……」
 
「……そうですよね。いきなりすみません。ははっ」
 
 まぁ、断られたらどうしようもないのだが。
 
 気まずい沈黙が二人を包んだ。
 
「えっと……それじゃあね」
 
 こうして、刃の川神学園での初日は終わった。
 

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