ハーメルン
魔法科高校の蛇
司波達也の風紀委員活動

 新入部員勧誘週間四日目、達也は今日も走り回っていた。

 勧誘活動でごった返す校庭を回避して、通報を受けたトラブル現場へと駆けていく。

 その途中、校庭の、テントが林立するエリアとは反対側、植木の陰で、魔法が自分に向けて放たれようとしている兆候を達也は察知した。

 達也自身に干渉するのでなく、足元の地面に干渉する魔法のようだ。

 もはや慣れてしまうくらい、達也はこの手の嫌がらせを頻繁に受けていた。

 仕事なので仕方ないのだが、風紀委員として達也が取り締まりを行えば行うほど、嫌がらせの回数は増していく。

 一年生の、しかも二科生が取り締まりを行い、更に反発する者は一科生であろうと実力でねじ伏せて摘発するのだから、中途半端な魔法選民主義に染まった者たちを怒り狂わせてしまったのだろう。

 逆恨みにもなっていない、理不尽に向けられる怒りからくる、的外れな報復行為。

 それを達也は慌てず事務的に、魔法の種類に合わせた妨害を行い、無効化した。

 これまで達也は今回のような嫌がらせを実害がないからと放置していた。その結果、魔法による嫌がらせはエスカレートしている。今までは風紀委員としての仕事があって後回しにしていたが、そろそろ自衛権の行使を優先してもいい頃だろう。

 そう考えた達也は相手を追うために急カーブを切った。

 しかし、相手も然る者だった。達也がターンしたと同時に、植木の陰から肉体のみでは不可能な速度で逃げ出した。おそらく、移動魔法と慣性中和魔法の併用による高速走行の魔法を前もって準備していたのだろう。あの速度だと普通なら足の動きがついて行かずに転んでしまうのがオチだが、この犯人は身体の方もかなり鍛え込んでいるようだ。

 短時間で捕捉するのは難しい、達也はそう判断して、追跡を中断した。

「ええん? 追わんで」

 その直後、上から声が降ってきた。直後、隣に市丸が音もなく着地する。どうやら校舎から跳躍の魔法で飛んできたようだ。

「相手もなかなかの腕だ。短時間で捕らえるのは難しい。それは上から見てた市丸の方がわかっているんじゃないか?」

「短時間でなければ可能なんやろ。だったら捕らえればええやん」

「風紀委員の仕事を放りだすわけにもいかないだろう」

「放り出すわけちゃうやろ。今のは明らかな対人攻撃や。それを取り締まるのも風紀委員の仕事や」

 言われてみればその通りではあるのだが、達也はこれまで自分のことに関しては常に優先順を劣後させてきた。そのせいで攻撃を受けた時点で対処するという考えには、なかなか行きつかない。

「アドバイスは受け取っておく。今度からはしっかり取り締まりをさせてもらおう。ということで、そろそろいいか?」

「んー、折角やから、少し同行させてもらおかな。君もなかなか苦労してそうやし」

「お前が来ると、苦労が増えそうだ。是非とも遠慮したい」

「ボクが無暗に傷つけて回っとるわけやないことは知っとるやろ。それ、暗に君が攻撃される可能性があると認めとらん?」

 否定はできなかった。実際に巡回中の達也が近づくのを待って、わざと騒ぎを起こして達也が仲裁に入ったところで、誤爆に見せ掛けた魔法攻撃を浴びせてくることがあった。

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