要警戒対象への対策
高校生活三日目の夕食時、司波達也は妹の深雪に風紀委員会本部で風紀委員長、渡辺摩利と話した内容を報告していた。
しかし、予想以上に波乱万丈の放課後になった。昨日の一件で目をつけられたことで招待された昼食で風紀委員に就任すること自体は打診があった。なので風紀委員入り自体は予想の範囲内だ。しかし、生徒会副会長の服部刑部の反対と、その際の達也に対しての言葉に深雪が暴走した結果、服部と模擬戦を行うことになったのは完全に予想外だった。
もっとも、そのおかげで、少なくとも服部が反対はしなくなったという点と摩利にも実力を認められたという意味では悪いことばかりではない。もっとも腕が立つと知られたことで逆に面倒も発生しそうであるので、良いことばかりでもないのだが。
「それで、今年の風紀委員が当面はお兄様だけというのはどういうことですか?」
ひとまず今日の報告で最も重要なのが、例年は三人が選ばれる風紀委員が、今のところは達也のみとなるということだった。
「それが、風紀委員の教職員推薦枠は森崎、部活連推薦枠は市丸だったようなんだ。だが、森崎は昨日の件の負傷もあり、当面は風紀委員活動は不可能。それで、もう一度、選任をやり直すことになったらしい。市丸については、言うまでもないだろう」
「風紀委員が一番、取り締まりを受けるようでは、さすがに格好がつきませんからね」
「ああ、だが、渡辺委員長も市丸を風紀委員にすべきかは悩んでいるみたいだったね」
「まだ市丸さんを風紀委員に選ぶつもりなのですか?」
「本来だったら、選びたくはないだろう。けれど、野放しにするより手元に置いた方が危険が少ないという考えもあるようだ」
明らかにおかしな理由に深雪も微妙な表情をしていた。
「お兄様なら、市丸さんを止めることができますか?」
「正直に言えば、わからない。昨日見たのが市丸の全力ならば、止めることはできるだろう。だが、最初の一撃以外は完全に遊んでいただけだったからな」
「市丸さんは魔法力も高いようですけど、私には接近戦の方が恐ろしいと感じました。私では市丸さんの剣を避けられるとは思えません」
深雪は完全に中遠距離型の魔法師だ。対魔法師戦では、周囲の空間を自分の魔法力の影響下に置くことで相手の魔法を無効化する領域干渉により相手の魔法を無効化し、非魔法師との戦いでは絶対的な魔法力を生かした高強度の障壁で身を守る。そして、攻撃では相手の防御力を上回る規模と強度の魔法をぶつけるという正統派の戦い方を得意とする。一方で、接近戦には特に長けているわけではない。
「魔法戦闘では市丸が相手でも深雪なら負けない。深雪にとって脅威なのは接近戦であることは確かだ、しかし、市丸はまだ何か手を隠しているように思えてならない」
「お兄様は何か気になったことがあるのですか?」
「市丸の剣だが、かなり刀身が短いものだ。刀というより脇差に分類されるものだな。だが、それだけ短い剣を使っている割に、妙に市丸の間合いが遠い気がしたんだ」
「つまり、本来ならもう少し遠い間合いが得意だということですか?」
「そう思えてならない。だから、本来は中距離を得意としていて、あの脇差は敵の接近を防ぐだけなのではないかとも考えた。だが、それだと説明ができないことも多いんだ」
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