川神学園の洗礼
時間は少し前に遡る。登校初日、士郎はパンフレットを手に職員室を目指していた・・・のだが。
「広いな・・・」
絶賛迷子中であった。
それもそのはず、川神学園は川神市を代表するほどのマンモス校であり校舎もそれ相応に広い。長い廊下、いくつもある教室に困りながらも歩く。
(ここは一年生か・・・ん?)
ふと、自分を見つめる視線に気づく。
なにやらただならぬ雰囲気を醸し出す緑の髪色をした少女がいた。
「・・・・!!・・・・!?」
なにか用事でもあるのか、はたまた新入生である自分が珍しいのか?馬の人形を手に必死に何かをしゃべっているのが実に目立つのだが本人は気づいていないらしい。
(彼女に聞いてみるか・・・いや)
必死な形相の彼女に道を尋ねようか、そう思った時、彼女が持つ綺麗な刺繍のされた細長い袋が目に入る。
(真剣?なぜこんな年頃の子が―――)
それがなんであるのか一瞬にして把握した彼の足がぴたりと止まる。ふむ、と思考する。
帯刀する少女。あたふたあたふたとした姿は一見頼りなさげだが時折こちらを見る目がただの少女ではないことを語る。
(準備は済ませてあるし、なにより彼女とは初対面だ。疑われる要素はない・・・はずなんだが)
手にもつそれが刃引きのされていない真剣であるということを考えると最悪の事態を考えなければならない・・・のだが。
年相応に感情を暴発させている姿がどうにも警戒心を削ぐのである。あれが演技だとしたら彼女はハリウッドスターだ。
どうしたものか―――
そう悩んでいたところに、
「おや、見ない顔だな?」
そう声をかけられた。
《今日からの新入生なんです。衛宮士郎といいます。貴女は?》
金髪の利発そうな少女だった。その容姿からして日本人ではないように見受けられた少女に英語で話しかける。
「・・・?私はクリスティアーネ・フリードリヒ!この学び舎で学ぶ2年生だ!」
ハキハキと喋るのだが。なぜか日本語で返されて内心焦る士郎。
「・・・日本語が通じるんだな。失礼した。俺は衛宮士郎。今日から同じ2年生に編入することになったんだけど職員室の場所を教えてもらえないか?」
同じ2年生ということでこれ幸いと彼女に案内をお願いした。・・・背後ではさらに緑髪の少女があたふたとしているのが良心を刺激したが、見るからに危ない橋は渡れなかった。
(ああああ・・・行ってしまいました)
(せっかく友達になれるかと思ったのに、やるぜクリ吉・・・)
案内を快諾したクリスティアーネに案内され、ようやく職員室にたどり着く。
「失礼します!」
「失礼します」
ガラリと職員室と書かれたドアを開ける。瞬間、
ピリッ・・・
と何かに触れる感覚を覚えた。
(・・・いや。敷地内に入った時から感じてはいた。となると―――)
この気配の犯人はここにいる。なぜか魔力のようなものを隠しもせず広域に展開しているのが学園長、といったところだろうか。
「―――ふぉ、ふぉ、君が衛宮士郎君じゃな」
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