第七話:絶望の夜明け
腕の中に抱えた温もりが、穏やかな笑みを浮かべながら語っている声をただ聞いていた。
出会ってから常に張り詰めていたようなそいつの空気が、腕に抱く弟に出会っただけで柔らかく変わったんだ。
「―――私はその時言ってやったのだ。自分の方がズタボロではないかと」
「ほう、よくそいつの威圧に負けなかったな?」
「む? あの時は私も怪我をしているレインを助けたくて必死だったからなぁ」
「ふふ……居てもたってもいられなかったというわけか。お前のいいところだな、ガッシュ」
「何を言う! おぬしも私をこうして助けに来てくれたではないか!」
「お揃いだな、お前たち」
話を聞いていて、何故か口をついてでた言葉。
自分でも分からなかったが、二人を見ているとぽろっと出てしまったんだ。
面食らったような二人だったが、ガッシュはその時、オレににっこりと笑顔を向けた。
「うむ。でもおぬしも私の兄の無茶に付き添ってきてくれたのだから……お揃いだぞ!」
そう言われると、オレは何も言い返せなかった。
ふっと、ゼオンを抱く腕に暖かさが触れる。
小さな二つの温もりに包み込まれた手。
「えーと……」
「デュフォーだ」
名前を教えていなかったことに気付いて教えると、ガッシュは花が咲いたような笑みを浮かべた。
「そうか! デュフォー! ありがとうなのだ! 私に会いに来てくれて!」
「別に……ゼオンが会いたいと言ったからついてきただけだ」
「ふふふ、やはりおぬしたちは似たもの同士だな!」
「おいおい、オレとデュフォーがか? どこがだ?」
「それは……」
苦笑しながら言うゼオンにも笑いかけながら、ガッシュはオレの手をきゅっと握る。
「デュフォーのこの暖かい手が、私が昔兄からもらった温もりと一緒だからだぞ! この手で兄の苦しみを和らげて、この手で私に温もりを届けてくれた! それは間違いなく二人ともの心が暖かくて優しい、似たもの同士の証拠なのだ!」
私はそう思う、と自信満々に言い切るガッシュに、オレはそんなことはないと言い返せなかった。
分からないんだ。そういうのが。
でも、どうしてだろうな。
答えを出す者はオレとゼオンやガッシュが似たもの同士ではないと答えを出しているのに……なんとなく、しっくりくる“答え”に思えてしまうんだ。
「ははっ、それはいい。ガッシュが思うのならそういうことだ。なぁデュフォー」
ガッシュと同じようにこちらを見つめてくる紫電の瞳。いつもよりもキラキラと輝いている綺麗な瞳。
「いつかお前の心にもオレが……いや、オレ達が光を灯してやるからな」
いつものような不敵さのない笑みに、オレの口元がピクリと動いた。
ふっと息をついたゼオンと、何も言わず更に笑みをはじけさせたガッシュがまた前を向く。
分からない。
ただじんわりと胸に響くようなこの感じを
オレは悪くないと思ったんだ。
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