ハーメルン
【第三部】『こちら転生者派遣センターです。ご希望の異世界をどうぞ♪』【追放者編】
第5話(2)『膂力』と『応用力』

「ごく普通かどうかは置いておいて……」

「あら? そこに引っかかる?」

「他の皆はどうしたのですか?」

 箒で宙を舞い続けながら、俺はメラヌに尋ねる。メラヌは北方を指差す。

「貴方たちはあの北の出入り口からこの都市に入ってきた……」

「え、ええ……」

「そして、出入り口近くの宿屋に泊まろうとした……」

「! 煙が!」

 俺は自分たちが宿泊しようとした宿屋の辺りから煙が上がっていることを見つける。

「今頃火事に巻き込まれていたかもね……」

「そ、そんな……」

「私たちが泊まっていたのはこの都市の南方に位置するホテル。残りの四人は二人ずつ分かれて、それぞれ西と東の宿泊施設で体を休めてもらったわ」

「なんの為に……?」

「刺客をかく乱する為よ。と言っても、一晩くらいしか誤魔化せなかったけどね」

「皆は無事なのですか⁉」

 俺はメラヌの肩をガシッと掴む。

「落ち着いて……なにか異常があったらこの子たちがすぐに知らせてくれるから」

 メラヌの周りに小さなコウモリが何匹か飛んでいる。

「こ、これは……?」

「私の使い魔のようなもの。情報収集等で役立ってくれるわ」

「今のところは大丈夫ということですか……」

「そういうこと、見るからに強そうな娘と魔法使い系の娘でペアを組んでもらったから、あまり心配は要らないと思うけど」

「……エルフの娘は誰と組ませました?」

「やたら武器を持ったノッポの娘と」

「ええっ⁉ エルフとドワーフを組ませたのですか⁉」

「えっ、あの娘ドワーフだったの? 見かけによらないわね……」

 俺は頭を抱える。これまでのいくつかの異世界を渡り歩いてきた経験的に、エルフとドワーフというのは仲が悪い、あるいは反りが合わないということが多かったからだ。そこまで真剣に考えてみたわけではないが、俺なりに導き出した見解としては、エルフは基本的に「森の民」であることに対してドワーフは「山の民」。つまり育ってきた環境が真逆ともいう程違う種族なのだ。現にこの数日、スティラとモンドが一対一で話している場面をまだ見ていない。大丈夫なのであろうか……。

                  ♢

 都市の東部に位置する広場の辺りで、スティラとモンドは箒で空を飛ぶ魔法使いの集団に包囲されていた。モンドは顎鬚をさすりながら呟く。

「ふむ……あの胡散臭い魔女殿のおっしゃっていることは真でござったか」

「貴方たちは何者ですか?」

「……それを教える必要は無い。転生者の仲間の貴様らには死んでもらう、それだけだ」

 魔法使いのリーダー格らしき一人が答える。モンドが苦笑する。

「穏やかな話ではござらんな」

「『フレイムボム』で始末しろ!」

 リーダーが号令をかける。二人の魔法使いが爆炎魔法を放つ。

「ふん!」

「何⁉」

 モンドの放った矢が爆炎を掻き消して二人の魔法使いを射抜く。リーダーは慌てる。

「なんという強弓……! 矢の届かないほどの高度を取れ! ……なっ⁉」

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