ハーメルン
【第三部】『こちら転生者派遣センターです。ご希望の異世界をどうぞ♪』【追放者編】
第2話(4)月夜の覚醒
「ショー様……この男から解毒の方法を聞き出せるかもしれません……!」
「そうなのですか⁉」
「……マスクをしているということはこの男自身にも毒の耐性は完璧にはついていないはず。万が一の事態に備えて、解毒の手段を有している可能性は高いです」
「成程、分かりました!」
俺は剣を構える。男は忌々しそうに尋ねてくる。
「ちっ……なんなんだ、お前?」
「……ふっ、何を隠そう私は……」
「……この方は貴方がたの邪な企みを砕く為にこの地に転生された勇者様です!」
「勇者だと?」
「あ、ああ……」
自分でカッコ良く名乗ろうかと勿体づけてしゃべっていたら、スティラに先に全部言われてしまった俺は若干居心地が悪くなるが、すぐに気持ちを切り替える。
「それ!」
「はっ!」
「なっ⁉」
勢いよく踏み込み、男との間合いを詰めた俺は剣を振るうが、男は懐から取り出した長目のナイフで、俺の剣をあっさりと受け止めてみせる。
「全く好みじゃないが……この程度の護身術は身に付けているさ……」
「くっ!」
俺は続け様に剣を振るうが、ことごとくナイフによって受け流されてしまう。
「はははっ! まさか手加減してくれているのか⁉ お優しいことだな!」
男は笑う。違う、俺は完全に本気だ。だが、悔しいがどうやらこのSSSランクの世界ではCランク勇者の俺の剣技など児戯に等しいようだ。近接戦闘が不得手なはずの術者にも軽くあしらわれているのだから。とはいえ、今この場で満足に動けるのは俺だけだ。嘆いている暇はない。なんとかせねば……局面を打開する為に頭を使え、俺。
「慈悲深い勇者様の気が変わらん内に、こっちから仕掛けさせてもらうか⁉」
まずい、別の術を使うのか? この状態異常の魔法や術に有効なマフラーでも、ある程度までの限界がある。考えろ、俺の剣さばきは短調だ、何かアクセントを……これだ!
「蔦よ!」
「何⁉」
俺の左手から蔦が生え、男のナイフを掠め取る。
「よし!」
「しまった!」
「もらった……!」
俺は剣を振り下ろす。左肩から右腰辺りを狙ったが、致命傷を与えるまでには至らなかった。足元が急にふらつき、踏ん張りが効かなかったためだ。
「くっ……」
「ふふっ、ようやく毒が回ってきたか!」
「く、くそ、後一歩の所で……」
「来い! 餌の時間だ!」
男が叫ぶと、村の周りの木々を薙ぎ倒して、巨大な蜘蛛が現れる。
「な、なんだと⁉ うわっ!」
俺は蜘蛛の吐き出した糸に絡め取られ、逆さまの状態で吊るされる。男が笑う。
「ふはははっ! 世にも珍しい転生者の血肉だ! とくと味わえ!」
「ぐうっ!」
蜘蛛が俺に噛み付こうと迫ってくる。駄目かと思った次の瞬間……
「
月突
(
げっとつ
)
!」
いつの間にか蜘蛛の真下に潜り込んだアパネが爪を突き立てながら空高く舞い上がり、蜘蛛の頭部を豪快に貫く。アパネは近くの大木の枝に着地する。男は驚く。
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