お祝いと保護者
無意識というのは恐ろしいものだ。習慣化している作業の中、ふとした違和感に気づかなかったり。あるいは考えるよりも先に身体が動いてしまったり。誰しもが少なからず経験したことがあるだろう。
そんなことを改めて実感したのは9月に行われた芙蓉ステークスにおいて、ターボが迫りくる二番手……マーベラスサンデーというウマ娘に対して写真判定に持ち込まれるほどの接戦を演じ、その上で勝利を掴み取った際に思わず涙してしまったことを思い出して。
そのことに我ながら動揺したからだ。直後にターボが声をかけてきた時には、誤魔化すように笑ってサムズアップなぞ返してしまった。舞い上がっていたな、と今更に思う。
自らの目標は未だ根強く魂に焼き付いているが、それでもいよいよ以てターボのトレーナーであるということが俺という人間の根幹を成し始めているらしい。物心ついたばかりの頃には欠片も理解できなかった、人々がウマ娘たちへ夢を託す、ということが心底理解できた。この世界の住人の1人としてようやく生まれ変わったような心持ちだ。
そう、俺もターボに夢を託し始めたのだ。俺が人類最速を、そう誇れるタイムを記録することと同等以上に。ツインターボというウマ娘に最速の二文字を冠して欲しいと。ともに最速を戴こうという、そんな夢を。
ジュニア級のマイルでは確かな実力を見せつけ。いずれ挑むだろうトウカイテイオーとの対決の舞台となる可能性がある2000Mの中距離でも、己の弱点や手強いライバルに競り勝ってみせた。そんなターボは今もなお、鍛えれば鍛えるだけスピードが、スタミナがどんどん伸び続けているのだ。
ターボは自らの目標を口にし、それを現実にしようと努力している。俺が出すトレーニングに文句一つ言わずついてきてくれる。ターボは心から俺に信を置き、指導には結果で応えてくれている。俺の夢を乗せて全力で走っているのだ。
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