セイウンスカイの4着、エルコンドルパサーの2着
迎えた天皇賞・秋、1枠1番1番人気のサイレンススズカの勝利を、誰もが疑っていなかった。
「足が前にいかない。追いつけない……!」
「どうして、どうして届かないのっ⁉︎」
『異次元の逃亡者、サイレンススズカ! 今、1着でゴールイン!』
毎日王冠で下の世代の最強格であるグラスワンダーとエルコンドルパサーを、影をも踏ませないような走りで子ども扱いをした。
これでサイレンススズカは6連勝中だった。
「1着はサイレンススズカだろうな」
「今回もあの大逃げ、楽しみだなあ」
「今チームスピカのってるよな、やっぱり」
レース場い入るやいなやそんな声が聞こえる。
「んで、2着はキンイロリョテイだな!」
「ぐぬぬぬぬう」
「いちいち気にしてんじゃねーよ」
リョテイに対する評価が耳に入るたびにトレーナーが悔しそうな表情を浮かべる。
キンイロリョテイは4番人気だった。
『……逃げ切ったっ! セイウンスカイが逃げ切った!』
「にゃはっ、ハマったね!」
毎日王冠と同日の京都大賞典で、一つ下のトリックスター、皐月賞バのセイウンスカイが大逃げから一度控えて差し切る、という作戦勝ちで逃げ切った。
2着3着はリョテイと同期のGI勝利バだったため、改めて一つ下の世代の強さの証明となってしまった。
ステイゴールドは競り合いに負け4着に終わった。
それでも掲示板を外してないだけ実力はある、と評価するものもいたが、1着との差はやはり大きい。
「てかそれなんだ?」
トレーナーが持っている紙袋を指してリョテイが言った。
「グッズですよ。売り切れる前にって」
「ああ、スズカのね」
スズカのグッズが売り切れているのはどこかで耳にした。それだけ人気も期待も集まっている。
「いえ、リョテイのグッズです」
「何買ってんだよ」
買わなくたって手に入るだろうが、とリョテイは思っていた。
「頑張ってください、リョテイ。1着、あなたならとれます」
「はいはい」
諦めていないのはこいつくらいのもんだ。
阿寒湖特別での勝利からもう1年が経っている。
負け続けることに対して、キンイロリョテイは特に考えることはなかった。
「むりぃ~」
とレースを走るウマ娘が言う姿をよく見る。
彼女たちと同じで「ああ、ムリだな」と思う瞬間がキンイロリョテイにはよくあった。
1着でなければ、2着も3着も同じだ。
そう考えている間は、きっと勝てないんだろうな、と強いウマ娘たちをリョテイは思い浮かべる。
ゲートで「タイマン勝負だ!」と言っているヒシアマゾンや、信念をたぎらせるナイスネイチャ、リベンジに燃えるエルコンドルパサー、彼女たちとオレは違うのだろうか。
『今、ゲートが開きました』
ゲートが開いてサイレンススズカが飛び出した。最初っからロケットスタートで飛ばしていく。
彼女に食らいついていくためか、エルコンドルパサーは2番手へと上がっていった。
キンイロリョテイも先行策を取っている、
しかし、サイレンススズカとの差はどんどん開いていく。
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