第10話【餓死と縛りの吸血ライフ】
◆
「復活したぞー!!」
洞窟に叫声が高々と響き渡る。
ここ数日間、高熱を出して倒れていた我が主。雨が降りしきっていたのもあってここの所はずっと寝たきり生活が続いていたのだが、雨も上がり熱も引き、我が主は完全復活を遂げたのであった。
「ふっふっふ……血液が無くなった時はどうなることかと思ったが、餓死することで事なきを得たな!」
いつもより若干頬こけたになった表情でドヤ顔をキメる我が主。
……餓死は事なきじゃないですよ……。
……というより、血液が無くても食事はできるのに、ウルチヤ様が血液無いとご飯食べたくないとかワガママ言うから餓死するハメになるんでしょう?
「くっ……ワガママとは何だ……!? 吸血鬼が食事時に血液飲まないでどうする!? 血液飲まない吸血鬼とか吸血鬼じゃないであろう!?」
迫真の表情と勢いで誤魔化そうとする我が主。
……でも正直、我が主のやっていることは駄々こねる子供と変わらないですよね。
「なっお前この前なんか良い感じに忠誠誓ってたじゃん!? なのに何故子供扱いっ!? 不敬であるぞ!」
ウルチヤ様への忠誠と親愛は確かな物ですが、それはウルチヤ様自身の未熟さも含めての物なので。
貴方様の全てを想うが故の、子供扱いですよ。
「なんか難しそうに言ってるが、要は我は子供っぽいとシンプルに思ってるってことだろう!? ……ま、まあ……我の全てを……ってのは、嬉しく無い訳でも無いが……」
怒りの声を上げながらもテレテレと頭をかく忙しない我が主。その顔の赤さはどちらが故か……。
……しかし、この数日間だけで何回餓死したと思ってるんですか貴方は……。
……正直、吸血鬼がどうこうという絵空事の為だけに飢えて死にゆく主を見るのは辛いです……。
「うっ……あぅ……」
苦言にも似た素直な心を吐露すると、我が主は一瞬自責の表情を浮かべ、俯いた。
「……それは、……すまない……。眷属に心配を掛けてしまうのは、……良くないとは、思う……。……でも、――」
――が、しかし。
その頭を上げ再びその表情を見せた時、我が主の瞳には強き覚悟が宿っていた。
「――我は、偉大なる吸血鬼という理想に生きると、この銀髪に誓ったのだ……!」
銀の後髪をはためかせ、我が主は言葉を紡ぐ。
「……故に! 我はこの命を幾つ懸けてでも、理想は、こだわりは……絶対に貫き通す! それが我の生きる道だ!!」
黒きマントを翻しその手を高らかに掲げ、威風堂々たる表情でそう宣言した。
――凛々しき表情とそのお姿は、まさにカリスマ溢れる夜の皇帝そのもので――。
――きゅるるるる……。
「…………あっ……。……〜〜〜〜っ!!」
我が主の空腹を告げる音色とともに、その凛々しい表情が真紅に染まっていく……。
……我が主、ひとまずヴェルニースで食事としましょう……。貴方様のお好きな乙女の血も吸えますから……。
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