第19話【異端の森と闇夜の再会】
◆
今宵は満月。月光が闇夜を照らす頃。
王都の宿屋のとある一室で、二人のエレアは控えめに開かれた窓を見る。
「……さて、そろそろだな?」
「ふふっ楽しみね、ロミアス」
「誰も彼もが自分と同じ意見だと思わないことだな、ラーネイレ」
「そんなこと言って、あの子を迎える為に率先して窓を開けたのは貴方じゃない……♪」
楽しげなやり取りをカーテン越しに聴きながら、我々は夜の影から光の戸へと飛び込んだ。
バサバサっ。
「わっ、コウモリがいっぱい……!」
「……ほう、なんとも吸血鬼らしい登場じゃないか」
彼らの部屋へと飛び込んでコウモリたち。
それらはやがて一つの場所に集まり、そして黒の塊となって人型を成していく……。
「昼間ぶり……いや、久方ぶりだな。吸血鬼の娘、ウルチヤ」
ロミアスの挨拶に呼応して、我が主が黒を晴らし姿を表した。
「…………そっ、だな……! ……ぜぇ……ロミアスっ、はぁっ……よぉ……!」
「……君は満身創痍でないと私たちの前に姿を表せない種族なのか? とんでもない息切れだな」
……我が主が行ったのはコウモリ化。己の身体を多数のコウモリに分裂させ移動する吸血鬼の能力である。
我が主は、このコウモリ化がかなり苦手なのである。
制御が難しく、体力を多く消費してしまう為、我が主がこんな酷い状態で登場するのもやむを得ないのであった。
「……ぜぇぜぇ……仕方ないであろう……!? 表は見張りがいっぱいいたし、テレポじゃ目当ての場所ピッタリには飛べないんだから……!」
「あの連中か。まったく、私たちに護衛は必要無いというのに、ホントウに、御人好しな連中だな」
「ねー。ホント、二人は強いのにさぁ」
……我が主、ロミアスが言ったの皮肉ですからね?
「……わ、分かっておるわ! ただちょっと乗せられただけで……」
「はいウルチヤちゃん、お水よ。これ飲んでちょっと休憩してね」
ラーネイレはそう言って、我が主にグラスの水を渡す。
それを笑顔で受け取りグイッと飲み干せば、たちまち元気になったと言わんばかりに両手を掲げ身体を伸ばした。
「はい我復活〜♪ ありがとう、ラーネイレお姉さん!」
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