第6話【死と這い上がりと目指す道】
◆
「チカラが……欲しいッ!」
唸るような声で切実な願いを叫ぶ我が主。
ここはとある草原。我々の周りを取り囲むは、ほとんど野良動物と変わらないような程度のモンスター。
最弱スライムモンスターのプチ。小動物のうさぎ。やけに固いやどかり。常に空中に浮遊している飛び蛙。……あと、シンプルに紛らわしい野良コウモリ。
街の近くということもあり、最弱レベルの雑魚モンスターしかこの周辺には居なかった。
きっと、普通の冒険者ならば目を瞑っても勝てるだろう。
「……ハァ……ハァ……きついぃ! こいつら相手すんのメッチャきついぃ!!」
……そう、普通の冒険者ならば……。
とてもとても非常に残念なことに、温室育ちであった駆け出し初心者冒険者の我が主では、たとえ雑魚モンスターである彼らが相手だったとしても、到底敵いそうにもないのであった……。
「おい、我を舐めるな! コイツら程度、一体ずつなら倒せるわ! ……だが、連戦となると非常に不味いというか、スタミナが保たんのだよ……!?」
現状、我が主の通常の攻撃力では、プチ相手に何とか傷を付けるのがやっと、というような状態であった。偉大なる吸血鬼の名が大号泣モノである。
しかしそんな我が主ウルチヤ様でも、吸血能力を使用すればどうにか敵を倒せる。牙を突き立て体液を啜りその力を吸い取っていけば、プチでもやどかりでも倒せるのだ。
「吸血鬼の吸血能力は最強だからな……! ……ハァ……ハァ……っ……!」
だがしかし、我が主のこの息の上がり様を見れば分かる通り、この吸血はかなりスタミナを消費する行為なのだ。
つまる所、我が主の継続戦闘能力は皆無に等しい。このように囲まれたら即効で御陀仏だ。
「ぐぬぬ……悔しいが……めっっっちゃ悔しいがその通りだ……あぁーーもう力が欲しいっ!」
そもそも、元来我が主は魔法の方が得意であった。しかし、その魔法すら事故のショックのせいか殆どストックが消滅し、現在我が主は魔法の使えない魔法職という謎の存在と化していた。
「そんな酷いこと言うでないわぁ! 我だって好きで魔法使えなくなった訳では無い! というか、魔法書買う金無いのが悪い!! ……所持金、全部海の底だもんなあ……うぅ……」
貧乏にあえぐ高貴なヴァンパイアですか……。今の我が主を見ていると、思わず目頭が熱くなってしまいますね……。
「適当なこと言ってないで我を手伝え眷属!! お前この野良コウモリくらいなら戦えるだろう!?」
私の戦闘能力は我が主と連動しています。我が主がクソ雑魚カタツムリな限り、私が戦力になることは無いと思ってください。
そう言って無慈悲にバッサリと切り捨てておく。……別に、私をそこらの野良コウモリと同列扱いしたことに腹を立てたとか、そういう訳では全然無いのであしからず。
「絶対根に持ったじゃん!? ヒドイよぉこの役立たず眷属ぅう……!!」
そんなこと言われても、実際力が殆ど無いのは事実なので……もっと実力もカリスマも上げたら私も貴方様のお役に立てますよ。
それまでファイトですっ!
「他人事みたいに言いやがって……! というか今普通にヤバイ! 疲れたぁっ! めっちゃ今疲れてるぅ!」
疲労を全力で叫びながらも、何とか相手の首元に噛み付き血を啜る我が主。
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