彼と2つの出会いと1つの別れ その4
ライスシャワーと行動を共にして6日。3つのチームの観察を終えたライスシャワーは机にこべりつきくたばっていた。
「ライス……もう…ダメ…」
「まぁ、その、悪かった。」
ライスシャワーがこう燃え尽きてしまったのは俺に原因がある。本日もいつも通り、観察を終えた後にトレーニング、だったのだが今日はいつもと内容が違った。というのも、観察対象であるチーム〈フォーマルハウト〉の江原トレーナーから併走をお願いされたのだ。明後日はライスシャワーをアピールする大事な模擬レースがあるのでちょうど良いと思って受けたのだが、俺はバカだったらしく、相手を確認しなかったのだ。ライスシャワーの相手だし、同期のウマ娘か、可能性は低いが秋に菊花賞が控える今年の皐月賞バが相手と予想していたのだが、相手はまさかのチームリーダーにしてエースである魔王スーパークリーク。ライスシャワーは魔王の圧倒的力量の差を見せつけられてしまったのだ。それだけなら良かった。むしろ、フォーマルハウトに対してライスシャワーの秘めたポテンシャルを実際に感じてもらえたのは俺としては好都合だ。しかし、その後が問題だった。ライスシャワーは……“赤ちゃん”にされてしまった。俺が江原トレーナーと話し合いをしてる間の一瞬の隙にヤられてしまったのだ。ライスシャワーを救出した後、江原トレーナーに問い詰めると『ここ最近、タイシンに付きっきりだったのと出張も有ってクリークのガス抜きがちゃんと出来ていなかったんだ。申し訳ない…』とのこと。俺たちは魔王の恐ろしさをまだ理解しきっていなかったということを痛感させられた出来事だ。
「ライス、ぜんぜん逆らえれなかった…フォーマルハウトの人たちってスゴいんだね」
「フォーマルハウトのウマ娘は自我、精神を鍛えられるってよく言われてるな。まぁ、その分、癖…個が強いウマ娘が多いチームとも言われる。」
「そうなんだ…」
「心配はいらない。ライスシャワーならクラシックに入る頃には耐性が出来るぐらいの個は確立できる。」
「それって、喜んでいいのかな」
「個をしっかり確立してることはレースにおいてかなり大切なことだぞ。まぁ、そのうち分かることだ。」
個の確立、それは領域の確立に繋がる。ライスシャワーには領域を確立させる才能がある。だからこそ、彼女を放っておけなかったし、選んだ。
「そうなの?」
先程からライスシャワーの言葉の節々に何となくだが、棘を感じる。
「そうだ。……魔王の時はすぐに助けられなくて悪かった。甘いもの奢るから機嫌直してくれ。」
「ふぇ!?べ、別に機嫌悪くないよっ…!…でも、しばらく甘いものいいや……」
ライスシャワーは3つのチームを観察する中でトレーナーとウマ娘のイチャイチャやら痴話喧嘩やらでちゅねやら色々なモノを見て来ているので確かに糖分の摂取過多なのだろう。
「あぁ……ビターチョコ、食べるか?」
「…食べます」
「カカオ99%だけど。」
「やっぱり、止めておきますっ!」
勧めると最初は皆そう言うんだ。でも、いつかは君にもこれの良さが分かるようになるよ。
「トレーナーさんとウマ娘の関係ってああいう……その…こ、恋人みたいなの多いの?」
「フォーマルハウトは置いておくとして、シリウスはアレで付き合ってないぞ。」
[9]前書き [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/2
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク