彼と2つの出会いと1つの別れ その5
『気のせいだ。』
そっか、気のせい……なのかな?
『レースに集中しろ、そろそろ来るぞ。』
えっ?
近い近い、近いですッ!何でそんな近くに居るんですか?怖いじゃないですか!バ群の近くで走るのが怖いから逃げウマ娘になったのにこれじゃあ意味が無いじゃないですかっ!
少し、少しぐらいなら…どれくらいの距離感なのか、後ろはどうなっているのか。ちょうど、コーナーだから見やすいし。
「すぅーハァー」
後ろをチラッと見た。
「…!」
「あ…」
後ろに居た小さくて黒いウマ娘が私の顔を見て嗤ったのが見えた。
目が合った。
スタミナに余裕は十分にある。正直、さっきから少しテイクオフプレーンさんが遅いとも感じている。
『冷蔵庫からプリンを持って来なきゃだな。』
少し、お兄さまのことが信じられなくったかもしれない。
《ライスシャワー、ついに外から仕掛けた!テイクオフプレーンに並…ばない!後続と差を広げていく!》
私のお兄さまはよくウソを言う人だから。
《1着はライスシャワー!圧勝だ!》
「お兄さまっ!ライス、勝てたよ!」
「おめでとう、遅くなったがやっと夢へ駒を進めたな。」
あのペースで走ったのにまだ余裕がありそうだ、流石だな。あと、その呼び方と走って抱きついてくるのは止めてくれ。内臓にクる。
「ありがとう、ライスを信じてくれて」
「トレーナーとして当然のことをしただけだ。あと、人見てるから」
「あ、~!ごめんなひゃいっ!あぅ~!噛んだぁ…」
レース後なのに元気だなぁ……脚も大丈夫そうだ。
「でも、俺はライスシャワーが勝つことは思っていなかった。驚かされたぞ?」
「えへへ、お兄さまってウソつきだよね」
「俺は一応、策士だからな。」
「そういえば、そうだったね…!」
「何だ、その言い方俺はいつだって策士だ。」
「策士の人は自分のこと、策士なんて言わないよ」
「…!確かに…そうかも…しれない。」
言うようになったな、こいつ…
「あ、これ、プリン。急いで持ってきた。」
「わぁ…!クライムフレーバーのプリンっ!プリンだぁ!えへへ…」
良い笑顔だ。さて、これで俺の役目も終わりだな。3人のトレーナーは既に集まってくれている。
「ライスシャワー、見事な走りだったわ。リギルの一員になる覚悟が出来たらこの紙に名前を書いてほしいわ」
「シリウスはまだ復興したてだけど、マックイーンの走りは必ずライスシャワーが強くなるのに役に立つ。シリウスに入ってみないか?」
「フォーマルハウトなら元祖高速ステイヤーの走りを間近で見られるよ?メンバーの癖が強いのは我慢してほしい…フォーマルハウトどうだ?」
3人の名トレーナーから担当契約書が手渡される。
「モテモテだな、ライスシャワー?」
「えぇえ!?…全部、トレーナーさんのおかげだよ」
「皆、ライスシャワーが欲しいから何だけどな。さぁ、選択の時だ。じっくり、考えな。」
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