ハーメルン
ラスボスの子に転生したのでNO.1ヒーローを曇らせたいと思う
01.目覚め

 知らない天井だ。
 
 え、いや、なにこれ。

 思わずお約束のモノローグが出てしまったけど目を開けたらマジで覚えがない天井が視界に拡がっている。

 俺自分の部屋で寝たはずだぞ?

 まじで知らないぞこんなこと……病院っぽいけど、窓がないっぽいし、明かりも自然のものじゃなくて実験室っぽい。

 それから機械音。ピッ、ピッ、ピッという規則的な音は病院ぐらいでしか聞いた覚えがない。じゃあここは病院なんだろうけど、でも変なんだよなぁ。

 視界の端の方にでかい透明な円筒? って言えばいいのか、そういうのがいくつも並んでいる。天井に向かって配線だか配管だかもある。あれだ、サバイバルホラーゲームの生物兵器が入っているやつ、あんな感じ。

 と、誰かが近くに立ったのか、顔に影がかかる。

「意識の覚醒を確認、バイタル安定……知能や『個性』についてはこれから検査の必要がありますが、成功とみていいじゃろう」

 俺をのぞき込んできた爺さん・・・なんか丸っこい。眼鏡がなんかゴーグルっぽいし。見た感じ医者か? んん、もう一人誰かいるのか? 身じろぎするのも億劫に感じるせいかよくわからない。

「思いのほか、感慨深いものだね」

 おう、なんつー渋い声だ。深みもあるし、なんつーこう、ナイスシルバーなおっさんなんだろうか。いや、でもなんだ、言い知れないものが。

「子を、持つというのは」

 おう、この人がパパなのか。

「子と言っても遺伝的なものでしかないぞ?」

「僕の一部から生まれたことに違いはないだろう?」

 一部っつーかマイクロサイズじゃねえですか。いやしかし、そんな小さな繋がりでもパパになっちゃうんだから生命の神秘だよな。よく考えたら俺の父親もよくそんなんで父親と認識できたもんだな。俺もそういう風になるんかなぁ。いやなれてなかったわ。

「名前はどうする?」

「そうだね……常夜(とこよ)にしよう。夜はかならず訪れる。そして僕は夜を支配しよう、その夜をとこしえに」

 わーお、あの世の名前を子供につけるとかどういうセンスなんすか。まあでも、感じからして女の子の名前だよな。

「あとは任せたよ、ドクター」

 パパが部屋から出て行ったようだ。ドクターと呼ばれた爺さんは、まんま医者でいいのかね。ドクターとベッドの上にいる(たぶん)俺だけが残された。

「では常夜、ワシの言葉がわかるか? わかるなら首を縦に振りなさい」

 当然わかっているので縦に振る……動かしづらい! 動いてる感じがしない!

「腕をあげてみなさい」

 うおおお、こっちもつらい。ピクリとしか動いてない。

「足はどうか」

 やっぱりこっちも動かない。

「ふぅむ、数ヶ月での速成のせいか筋肉の発達がいまいち、まずはリハビリから始めねばならんか。内臓も似たようなものだろうから摂食は無理、当面点滴か……ワシ一人でやる仕事ではないからうまいこと言って上で面倒を見させるとしよう。脳無開発をしているここに人をいれるわけにもいかん」

 どうやらこれから普通の病院施設に移してもらえるらしい。よかった、ここじゃなにされるからわからないからな……そもそもなにされて誕生したかわからないんだけど。速成とか言ってるから、成長速度早めたりされてるよな、これ。

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