ハーメルン
Re:escapers
こんにちは、農業高校

 いわゆる、ライトノベルにおける転生モノ、というのは世にあふれているにしても。
 我が身に降りかかって、初めて理解できる事というのはある。

 例えば……

『神様……畜生道に堕ちるような事、俺、何かしましたかね……?』

 そう、転生前の意識は残っているが故に、どんな風に転生しようが不条理しか感じないという事である。

 はい……アラサーのオッサンは、馬になりました。

 真っ暗いトンネルを抜けて、出てきたのが藁の上。
 とりあえず、本能に従って、今世で母にあたる馬の乳首に吸い付いて飲み干したあと、ひと寝入りして暫くしてから、気づいたのですが。

 自分がサラブレッドだとしたら、ココは一体ドコの牧場なんでしょうかね?
 何しろ……

「おー、白いのー、元気かー?」
「アシ君、元気だなー」

 何でジャージ着た学生と思しき面子が、代わる代わる面倒見てくれてるんでしょうねぇ?
 牧場の職業体験にしては、頻繁かつ人数多すぎやしません?
 大人と言える人たちも何人か来てるけど……あれこれ指導はしてるみたいだけど、基本は学生たちの手で世話されていたりする。

 あ、自分、芦毛みたい。しかも生まれた段階で割と全身白っぽい。
 今世の母ちゃんも芦毛みたいだし、コレは完全に遺伝だな。
 っつか、自分で見える限り『白毛じゃないの?』ってレベルだが、周囲に『芦毛だ芦毛だ』と騒がれていたので、多分見えないトコがまだ黒いんだろう。
 あと股間を覗いたらオスだった。

 っていうか……ここ、ドコ? 本当にマジでドコの牧場?

 だって……

 りーん、ごーん、がーん、ごーん……

「よーし、じゃあ俺たち授業があるからなー」
「がんばれよー、アシちゃん」

 遠くから聞こえてくる、ノスタルジーすら感じる鐘の音。
 そして、馬房の隙間や入口から見える、畑と農機具の小屋と……学校の校舎。

 どう見ても、ここって学校……つか農業高校だよね、コレ!?

 でも母ちゃん見る限り、どう見ても自分もサラブレッドなハズで……いや、待て。
 噂で聞いた事がある……なんでも、授業の一環で、マジで競走馬を生産してる農業高校があるとか何とか。

 確か……

『嘘だろ……』

 学生たちのジャージの胸に『道立静舞農業高校』の文字が、がっつりと刺繍されていたのを見て、俺は愕然とした。




モデルは北海道の静内農業高校ですが、物語の都合上、舞台としてかなり弄って誇張した話になります。
規模的には、『銀の匙』の舞台である、大蝦夷農業高校(エゾノー)くらい、一周20キロ規模の、敷地内に原生林すらある超大規模かつ複数の科が存在する、マンモス農業高校という設定です。

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