ウマ娘編……『一射一笑、大ルビーを狙え』
トレセン学園の問題児、と言われれば。
間違いなく、第一候補にあがるゴールドシップ。
だが、彼女曰く。
『あたしより上の問題児はいる』との事。
そして、これは。
そんな彼女が語っていた、真偽も定かならぬ、電波な与太話である
トレセン学園の片隅。ほとんど人の来ない森の中で。
一人のウマ娘が、何故か鼻歌を歌いながら、小ぶりな車……フィアットF500……を弄っていた。
「ふっふっふふ~ん、ふーふーふ~♪ ふっふっふっふ~♪ ふーんふーんふーん♪」
左目に片眼鏡をつけた、芦毛のウマ娘が、制服姿で工具を片手に鼻歌交じりでご機嫌である。
手足が細いために、ややひょろりと長い印象を受けるが、プロポーション自体は均整が取れているのは、流石に三女神の加護を受けたウマ娘というところか。
どこか人を食ったような笑顔からのぞくギザ歯が、割と彼女の本質を表していた。
そんな彼女……バーネットキッドは、自称『トレセン学園の探偵』を名乗ってはいるものの。
どこぞのパチンカスな陰陽師よりも胡散臭い態度であり、何か『事件を解決した』とか『依頼を受けた』とか、そういった話はついぞ生徒たちの耳には入ってない。
「よーう、キッド♪ 機械いじりか? 100年後ヒマ? 空いてたら宇宙行かねぇ?」
そんな彼女が気になったのか気に入ったのか。
チームこそ違えども、ゴールドシップとバーネットキッドは、親しげに声をかける関係にはなっていた。
「なんだ、宇宙行きてぇの? じゃあ明日行くからついでに連れてってやるよ。
内之浦から宇宙行く予定だから、時間もねーし調布から飛行機で鹿屋の航空基地に降りるからな」
「へ?」
そして翌日。
『19、18、17、16………ゼロ』
『メインエンジンスタート! SRBに点火』
『リフトオフ!』
一筋の雲を残して、高々と。
そりゃもう蓬莱ニートを月に強制送還する勢いで、内之浦の発射基地から打ちあがるロケットに、宇宙服を着た二人が乗っていた。
「なんだよなんだよ! 宇宙って簡単に行けるんじゃねぇか!!」
「バカ言え、ツレのおめーが行きたいっつーからねじ込んでやったんだぞ。
ってか、宇宙っつっても、静止軌道あたりまでだから、月面とか火星には行かねーからな」
「なんだよつまんねーなー」
「だって用があるの静止軌道だもんよ」
やがて……加速が終わり、無重力空間になったところで。
キッドは時計をチェックする。
「で、何しに宇宙に来たのさ?」
「あ? 頼まれモノだよ、ちょっとした依頼さ。
頼まれついでに、頂くモノは頂いちゃおうってね♪」
そう言って、キッドが取り出したのは、一張りの小ぶりな短い弓矢だった。
「なに、宇宙遊泳しながら弓でも引くのか?」
入学当初から、ほぼ毎日学校のプールに通いつめた結果、河童やケルピーの異名を取り。
あまつさえ、『立ち泳ぎしながら短弓で50メートル先の的を射抜く』という離れ業をやってのけたバーネットキッドではあるが。
そもそも、宇宙に弓を持ってきた理由が、分からないのである。
「んー?
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