閑話
ルーデウス・グレイラットから見たエミリーという少女は、理不尽なほどの剣の天才だ。
5歳の頃から一緒に剣を習うことになったが、転生者であり、前世の記憶がある分、普通の子供よりは遥かに有利であるはずのルーデウスが積み重ねた努力を、初日であっさりと抜き去ってしまった。
その後も、どれだけ努力してもエミリーに追いつける気はしなかった。
パウロも感覚でやっていることを一度見ただけ聞いただけで理解してくれるエミリーに教えるのは楽しそうだったし、パウロの言ってることが感覚派すぎてさっぱり理解できないルーデウスとしてはあまり面白くない。
不貞腐れそうにもなったが、しかし世の中、自分より凄い天才なんてありふれている。
世の中そんなものだ。
自分が一番なんてことはないし、それを理由に努力をやめたら悲惨なことになると、前世で34歳無職ニートだった頃の記憶を戒めに努力を続けた。
まあ、エミリーは剣術以外基本ポンコツだったし、魔術を教えた時みたいな微笑ましい姿も見てるし、何より見た目が金髪ロリっ娘エルフという、それだけでご飯十杯はいけるレベルで好みの外見だったおかげで、不快感や劣等感がそこまで大きくならなかったのが幸いか。
おまわりさん、こいつです。
そんなルーデウスはある日、エミリーの姉であるシルフィをイジメから救った。
彼女は放っておいたらまたイジメられそうだし、自分もボッチでシルフィ以外に友達いないし(エミリーには多分友達認定されてないので除く)、ロキシーの授業を卒業して暇になった時間を使って、ずっと一緒にいた。
ルーデウスに自覚はなかったが、時間が経つほどにその関係は共依存へと変わっていったようで、それを危惧したパウロによってボレアス家へと強制的に出荷されることで引き離されたが。
そうして流れ着いたボレアス家にて、エリスという狂犬お嬢様の家庭教師をする日々。
受け入れてもらえるまでに一悶着あり、受け入れられてからも問題だらけだったが、それがようやくある程度落ち着いたと思った矢先に悪夢襲来である。
ギレーヌは知っていたみたいだが、知ってたなら事前に教えておいてほしかった。
いくら前世を戒めにしているとはいえ、根が遠吠えしまくる負け犬根性全開のルーデウスでは、転生者なのに魔術を使っても勝てないだろう同年代として劣等感を煽りまくってくるエミリーと戦闘訓練の場で向き合うには覚悟がいるのだ。
そして、やはりと言うべきか、久しぶりに覚悟を問われるエミリーとの戦いが勃発してしまった。
ギレーヌに筋が良いと褒められているエリスと組んでの2対1。
途中、隙を突いた泥沼の魔術で逃げ場のない空中に追い詰めた時は「勝ったか!?」とぬか喜びしかけたが、直後に向こうもまさかの魔術を使ってきて、やっぱり負けた。
更に、その後に行われたギレーヌとエミリーの戦いを見て心が折れかけた。
ギレーヌは剣術があまり得意ではないルーデウスですら、その強さを肌で感じ取れるレベルの圧倒的強者だ。
前にルーデウスが殺されかけた誘拐犯を瞬殺してしまうほどの達人剣士。
そんなギレーヌが誘拐犯相手の時より本気で戦ってるように見えるのに、勝てないまでもかなり食らいついていたエミリーは、もうパウロより強く見える。
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