19 化け物との出会い
ヒトガミの夢を見た日の午後。
私達は街を出て、森の中を進んでいた。
街道はいつも通り軍隊が封鎖してる可能性があるから使わない。
仮に封鎖されてなかったとしても、ここらは道を阻む関所のチェックがやたら厳しい。
国民の流出でも懸念してるのか、基本的に関所は難癖つけて、通行しようとする人全員を国内に押し返すのだ。
来る者拒み、去る者逃さずって感じだよ。
そんなことしたら国の流通とか止まりそうなもんだけど、崩壊寸前の国にはそこまで考える余裕がないのかもしれない。
狂気。
そんなわけで、私達は通れる場所が消去法でここしかないので、街道から外れた森の中を進んでいる。
当然、森は森で危険がある。
ここまでの道中で嫌というほど思い知らされた危険が。
まず魔物。
これはいい。もう慣れた。
対魔物戦の経験値を積んだ今、青竜みたいなヤバい奴さえ現れなければ問題ない。
次に、野盗と兵士。
これもまだいい。
人を斬ることへの躊躇なんて、とっくの昔にそこら辺に捨ててきた。
そうじゃないと、この紛争地帯は生き抜けない。
こっちも聖級剣士みたいな強敵さえ出てこなければ問題なし。
多くの剣士や戦士達との戦闘経験を積み重ね、自分だけでなく両親も守らなくてはという重圧の中で戦い続けたおかげで、皮肉なことに私の戦闘力自体は上がってるからね。
転移のおかげとは口が裂けても言いたくないけど。
で、そうなると懸念は当然、青竜や聖級剣士みたいな強敵だ。
どこまで運が悪いのか、今日も私達はこれに出くわしてしまった。
発端はいつものように、見覚えのある国の鎧に身を包んだ兵士達に見つかったこと。
バトルロイヤルしてる三国のうちの一国の兵士だ。
こいつらは、まるで何かに誘導でもされてるかのように、毎度毎度的確に私達のところに現れる。
そして、いつものように「殺せ!」となり、いつものように私とそいつらによる殺し合いが始まった。
ただ、その日いつもと違ったのは、
「突撃ーーー!!」
「くたばれ! ディクトのカス野郎どもぉ!!」
「なっ!? ブローズのクズどもだと!?」
「迎え撃てぇ!!」
途中で三国のうちのもう一国の兵士達が乱入してきたことだと思う。
そこからは三つ巴の戦いになった。
このまま乱戦に紛れて逃げたいと切に思ったけど、そう上手くはいかない。
こっちには、これまでの戦いで満身創痍の父と、その父を支えて機動力が鈍ってる母がいるのだ。
二人を守りながら戦線離脱するのはキツい。
背中を見せたらやられる。
しかも、私がなまじ強くて兵士達を斬り殺してるせいで、奴らの中で私の撃破優先度が下がらないのも辛い。
だからって、殺さないように手加減なんかしても、奴らの攻勢が強まるだけだ。
この紛争地帯で一度戦闘になれば話し合いは通じない。
二人を守るには、奴らの魔の手が二人に伸びる前に皆殺しにするしかない。
でも、今回は両国合わせて30人くらいの兵士と、おまけに何人かの魔術師、果ては両陣営に一人ずつ聖級剣士と思われる奴らまでいるから、もう運が悪いとかそういうレベルじゃないよ!
運命に嫌われてるか、そうじゃないなら何者かの作為を感じるレベル!
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/2
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク