ハーメルン
さして仲良くない職場の先輩と飲み会の後に毎回セックスして繰り返し記憶をなくしている百合
さして仲良くない職場の先輩と飲み会の後に毎回セックスして繰り返し記憶をなくしている百合
「もう……わかったってば……」
後輩の初めてを奪っておきながらまるで反省する様子のない立花は、どうにかベッドから降りて服を着た。
そして、すでにテーブルに着席している真雪を一瞥してから、コーヒー牛乳とヨーグルトを冷蔵庫から取り出し、それを二人分並べて真雪の対面に座った。
「……これ、昨日の帰りに買ったんですか?」
立花が用意した朝食を見て、真雪は目を丸くした。
コーヒー牛乳もヨーグルトも、どちらも真雪が好きなメーカーのものだったのだ。
「んー? もっと前に私が買ったやつだよ」
立花は淡々とコップにコーヒー牛乳を注いで、ヨーグルト用のスプーンを真雪の手前に置く。
食品ぐらい好みが被ることも珍しくはないとはいえ、こんなきっかけでなければもっと立花と仲良くできたのではないかと思うと、真雪の胸中にえもいわれぬ悔しさが滲んだ。
「それで、本題についてですが」
「絶対に他言はしない。私たちの間でも話題にしない。職場で急に馴れ馴れしくしない。これでいい?」
「え、あ、はい」
これから真雪が言おうとしていたことを全て言われてしまった。
さすがに職場では頼れる先輩なだけあって聡明な人のようだ。
早々に話が終わってしまい、真雪は気まずい空気の中で黙ってコーヒー牛乳とヨーグルトを胃に流し込み、ほどなくして立花の家を出た。
スマホの地図を頼りに最寄駅に行き、そこから電車で自宅へと到着する。
家に帰ると、朝までぐっすり寝ていたはずなのに、どっと疲れが出て一日のやる気が根こそぎ奪われてしまった。
真雪は自室のベッドに倒れ込み、じわじわと頭を悩ませてくるその現実に、目を背けることができなかった。
──初体験を、恋人でもない女の人と済ませてしまった。
「先輩……あんなエロい体してるから……」
一人になって、真雪はふと立花の艶かしい裸体を思い出した。
初めてを奪われたというのに、立花への嫌悪感はなく、それどころかあの卑猥な肉体を想像して気分が高揚している自分がいる。
ムラムラと下腹部の奥底が疼くような、そんな掴みどころのない欲求が真雪を悩ませるのだ。
「ダメ。やっぱり忘れないと」
真雪はベッドから飛び起きてキッチンに移動する。
男女の見境もなく、酔った後輩を襲うような立花が、性関係にだらしないのは明白だ。
それに対して、真雪は初めてを奪われて動揺している。
この気の昂りは性的な興奮ではなく、動悸や何かに近いものなのだと、真雪はグラスにウイスキーを注いでそれを喉に流し込んだ。
そのウイスキーボトルはいつかの宅飲みの余りを引き取ったものであって、決して真雪は酒好きというわけではない。
飲んだ記憶もないのに見るたびに残量が変わっているような気もするが、アルコールなのできっと揮発でもしているのだろう。
真雪はお酒を飲めばすぐに眠ることができる。
昨夜のことはやはり夢だと思い込むのが一番だと、真雪は朝から再びベッドへと潜り込み、その日はひたすら寝ることに徹して一日をやり過ごしたのだった。
平日になれば嫌でも仕事は始まる。
真雪は都内にオフィスを持つ大手企業の事務員として働いており、立花は二つ上の先輩だ。
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