原作でも一度は派手に殴られるべきだった
ギャラクトロンが無惨に食い荒らされている。
極めて頑強なボディが容易く噛み砕かれ、飲み込まれ、消えていく。
宇宙爆蝕怪獣ウーラーの目覚めは、そんな軽い食事から始まった。
「あれがウーラー……!?」
「Woooolaaaaaaa!」
トライストリウムと化したタイガが、ウーラーと対峙している。かなり動揺しているが、あれがウーラーであることは理解しているようだ。討滅しなければ地球が滅ぶと本気で戦っている。
そんな世界を滅ぼす厄災扱いなウーラーの姿ははっきり言って不格好で歪んだ怪獣だ。
様々な怪獣や無機物の破片をくっつけたようなくすんだ表皮、つぶらながら常に何かを求める瞳、申し訳程度についた両手と突進力に優れた足……しかし最大の特徴はやはり、巨大な口だろう。
「光線を、食ってる!?」
「~~~~♪」
胴体周りとほとんど変わらないほど大きく開けられる奈落の穴は、トライストリウムの必殺光線をジュースでも味わうかのように滑らかに飲み干している。吸引力も強いのだろう、光線を胴体へ逸らすこともできない。
「な!? うわぁ!!」
「Glug♪ Glug♪」
このままでは光エネルギーを食い尽くされると、やむなく光線を止めた隙をついて、ウーラーがタイガに齧り付く。そのまま彼の光エネルギーを激しく吸収していき、タイガは強制的に変身解除へ追い込まれてしまった。
よく耐えたタイガ、ヒロユキ君。俺も飛び出して食事の邪魔したくなったのをぐっと耐えたぞ。
「ぐ……!!」
道路の金網に叩きつけられるように投げ出されたヒロユキ君。
ウーラーに噛まれた腕を痛々しく摩っている。タイガ、ヒロユキ君へのフィードバックはもっと抑えないと駄目だぞ。
ちょっと厳しい採点をしつつ、支えるように彼の体を引き上げた。あまりの不意打ちに彼は目を見開いて驚愕を露わにしている。
「霧崎!?」
「選手交代だ、ヒロユキ君。君は旭川ピリカに会った方がいい」
「何を言って……!? あれはお前の仕業じゃないのか!?」
はい俺の仕業です。
頷いても煽りにしかならない自覚はあるので、敢えて回答を避ける。
美味しい餌が急に消えたことにきょとんとしてるウーラーがちょっと可愛いが、飢えの本能によって地殻を食い荒らす前に手を打たねばならない。
新たな怪獣リングを取り出し、力を与えて起動する。
「元来の役割を果たす時だ、ギガデロス」
「ギュオウィーン」
「Woooolaaaaaaa」
召喚されたギガデロスを見て、ウーラーは地面へ潜ろうとする動作を止めて突進を開始した。あのロボット怪獣も高エネルギー炉を持っているから、多分先程喰らったギャラクトロンの同類と思っているのだろう。
だがギガデロスは分身技を保有している。焦らせる餌……囮役としては最良の活動が期待できるだろう。
惑星守護神としての役割をもって作り出されたのだから、今こそ本当の使命を果たせる時だぞ!! その役割歪ませて台無しにしたの闇堕ち俺だけどな!!
惑星守護神がウーラーとぶつかり合いながらも、街を壊さぬよう戦う姿にヒロユキ君も驚いているようだ。ギャラクトロンも落下後は待機させていたしタイガ相手に防戦一方にさせていたので2体とも俺の意思により動いていると確信したに違いない。
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