グリムドの情動・とある輝きの奮闘
宇宙開闢の産声たる大いなる爆発。
その遥か前の世界を、現在知的生命体と定義されている者たちが完全に理解することはできない。だから、ビッグバンこそを始まりと呼ぶ者すらいる。
宇宙の始まりからを1とし、始まりとそれ以前の境目を0、それ以前を-1とする。虚無たる世界であろうと想像するものもいる。宇宙から新たな宇宙が生じる瞬間がビッグバンで、真なる原初の宇宙があると考えるものもいる。
いずれにせよ今の宇宙に生きる限り、確認することは叶わない世界だ。
邪神グリムドはその時から在った。知的生命体が得てきた概念思考では、一言で表現しようとするだけでも、苦しみ悩むことしかできないような、次元という概念すら生じぬ世界にただ存在していた。
無数の同類が、何をするでもなく蠢いていた。見るものが見れば、それは闇に溶け込み、水のようなものに浮かぶ神魂だと無理矢理解釈したかもしれない。
ただ在るだけで何もかもが完結していた。
それだけで全てが整っていて、そこに在るモノたちは現状について疑問の1つも浮かぶことはなかった。
だから、そんな満ち足りた世界が壊されるとは考えすらしなかった。文字通り突然に世界は壊れた。
もし当時の事を訊ねれば彼らは口をそろえてこう返すだろう。
「なんもしてないのにこわれた(邪神語」
本当に急に生じた偉大なる爆発は、瞬く間にグリムド達が棲まう世界を焼き尽くした。
広がり続ける無限に等しい爆発は、次元を産み、空間を産み、時間を産み、光と闇を隔てた。凡ゆる概念と共に無数の宇宙という世界に新生させた。
安住の地は始まりという理不尽により奪われたが、グリムドは何も感じなかった。これまでと変わらない、ただ在るだけ。
何もかも変わってしまったが、自分達はいつもと変わらずここに在るじゃないか。なら何も問題はない筈だと。
しかし、宇宙に自分達と何もかも違う『生命』というものが無数に産まれた後、その生命の上に更に無数の小さき生命が誕生した時。初めてグリムドを含めた邪神達は興味を抱いた。
新たな世界から生じた、あまりにあり方が違う新参者達。彼らは始まりと終わりを内包していた。ただ在った彼等からすればそれは異端にすぎた。
それがいけなかったのだろう。
興味のままに、星と呼ばれだした生命の上に降り立ってみた。
全てが終わりを迎えた。
世界が定義した邪神という在り方は、この瞬間から始まった。
彼等は意味がわからなかった。近づいただけなのに、みんな動かない。全てが違ったグリムド達は、比較を知らなかった。交流を知らなかった。
理解できないまま、何をどうすればいいかわからないまま、次こそはと考えて、同じことを数度繰り返した。
やがて、自分たちが訪れて彼等が終わりを迎える時、撒き散らすものが感情というものであることは理解できた。
そればかり浴びてきて、そればかり受け取って。
これは彼等が自分達に捧げてくれている贈り物なのではと考え出した。だって、いつも同じものばかりくれるのだから。
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