ハーメルン
自分の事を主人公だと信じてやまない踏み台が、主人公を踏み台だと勘違いして、優勝してしまうお話です
14話 勘違いフェイ


「なぁ、ちょっと良いだろうって。付き合えって」
「……」


乱暴な男性に腕を掴まれるが、何もしない少女。言葉が出ないのか、出さないのか、それは誰にも分からない。

ただ、感情は僅かにあるようで大人しそうな目から僅かな反抗心が伺える。男性の手を振り払って、距離をとる。

「おい、だから、ちょっとだけ――」


そう言って三度手を伸ばそうとする。男性の手を、誰かが掴んだ。黒髪に黒い眼。その眼は虚空のようで同時に龍のように鋭かった。


「不快だ。去れ」
「ああ!?」
「……もう一度言う。去れ。三度は言わせるな」
「――ッ」


ゾクっと、全身の毛がよだつような感覚に男性は襲われた、酔いは一気に冷め。震える脚を無理に動かしながらそこを去る。

それを見て、男は僅かに助けた女を見る。だが、何も言わず、礼を求めず、気遣いもせず、彼女の元を去った。


本当に、自身が不快であったから助けたのであろう。彼女に見向きもなく、ただ、ただ、その場を去る。


自然と女性はその男性の背を負っていた。


「ベータ?」


男が向ける背の反対方向から、優しそうな女性の声がする。振り返ると、助けられたベータと呼ばれた少女と全く同じ外見の女が居た。眼は少し、鋭く、髪型はショート。


ただ、体の凹凸は同じようにしっかりとでていて、美しかった。


「……」
「どうしたの?」
「……」
「なにかあった?」
「……ッ」


ベータと言われた少女がコクリと頷いた。


「そっか。ごめんね。私、少し買い物に夢中になっちゃって。怒ってる?」
「……」


頭を二回振って、少女は答えた。

「そっか、じゃあ、寮に帰ろう。ガンマも待ってるし。今日はお姉ちゃんが昼食作るからね」
「……」
「その眼は何? もしかしていや?」
「……」


コテンと首を傾げる、何とも言えないようだ。


「まぁ、良いけど。私が作るから」
「……ッ」
「え? ベータが作る?」
「……!」
「え……まぁ、歩きながら決めよう」


そう言ってベータと彼女の姉であるアルファは歩き始めた。ふいに、僅かにベータが足を止める。


そして、先ほどの男の歩いて行った方を振り返った。だが、そこにはもう、その姿は無かった。

あの彼をどこかで見た気がする。僅かにベータはそう感じた。男らしく、寡黙でどんな人なんだろうと気になった


■◆



さっき、美少女が変な奴に絡まれてたから救ったぜ。

いや、それにしてもベタだな……

でも、嫌いじゃないよ、ああいうの。主人公の見せ場を作る代表的な奴だもんね。

あの女の子、誰だか全然知らんけど。いやー、救った俺が、俺の出番を作ってくれてサンキューとでも言いたい位だ。

ビシッと決まったよね。こう、カッコよく雑魚を撃退する主人公。これはあるあるよ。もう、これやらないとみたいな? 通過儀礼だよ、あれは。


俺が今まで訓練してきたから、その覇気にもやられたんだな。お酒臭かったけど、酔いも覚めた感じだったし、ええ感じに小者や。

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