ハーメルン
『書籍化!』自分の事を主人公だと信じてやまない踏み台が、主人公を踏み台だと勘違いして、優勝してしまうお話です
15話 序盤の敵
遂に、この日が来たぜ。本入団、そして、初任務。朝から気合が入っていますよ。
「ふぇい、きょうからにんむ?」
「あぁ」
「すげぇ! がんばれ!」
「あぁ」
レレも応援をしてくれる。
「フェイ、無茶はダメよ? 絶対に帰って来てね……」
「あぁ」
「ふぇい、おみやげ!」
「あぁ」
任務が楽しみ過ぎて、集中できないなぁ。周りの話が頭に入って来ない。あぁ、楽しみだなぁ。一体全体、どんな活躍をするのだろうか。
主人公の伸びしろとか、成長速度は誰にも測ることなど出来ないからな。俺が考え込んでいると、マリアが柔らかい手でそっと俺の手を包み込む。
あ、柔らかい。
「帰って来れるように、おまじない……昔、誰かがこれをやってくれたような気がして。だから、フェイにもやっておくね」
「……そうか」
うーん、この健気で素晴らしいこの感じ、マリアは聖女と言うか王道的なヒロインの匂いがするなぁ。
アーサーとは違う。ジャイアントじゃない、小さいパンダみたいな愛嬌があると言うか。
そして、俺はクールに孤児院を出るぜ。トゥルーとは全く話さない。あいつ、マジで訓練以外俺と関わりが無いな。
いや、別にいいんだけどさ。
俺との絡みが無いと出番へってくぜ? いくら魔術適正があったとしてもさ。いや、別に出番とか気にするはずないだろうけどさ。
ポテンシャルとか結構あると思うから。その内、主人公である俺の右腕くらいにはねぇ?
してあげてもいいけども。
そんな風に主人公として、モブキャラ的なトゥルーの心配をしながら俺は初任務の集合場所である王都ブリタニアの門の場所に向かう。
「あ、フェイ」
「アーサーか」
「おはよう」
「……あぁ」
「おはよう?」
「あぁ」
「……どうして、挨拶返してくれないの?」
「……返したが?」
「おはようってちゃんと言って欲しい」
「……そのうちな」
アーサーが俺とほぼ同時に場所に到着をした。そして、その後にボウラン、トゥルーも来場する。
そして、本日の任務は今までの先生とは違う聖騎士が付くらしい。ユルル先生。魔術のジジイ。
偶に座学を教えてくれるおっちゃん先生。それらすべてとは違う新しい先生か。
まぁ、新キャラって奴かね? 主人公の俺に付く新しい先生が只ものであるはずがないよな?
実は滅茶苦茶凄いエージェントみたいな先生だったりして。
待って居ると、
「すまない。遅れたようだな」
赤い髪に、赤い眼。顔立ちが整っている良い感じの男性。眼がちょっと鋭い。俺とキャラかぶりを少ししてるような……
「俺の名は、サジント。三等級聖騎士だ。今日はお前たちと一緒に任務に行くことになる。よろしくな」
「よろしくお願いします」
「よろしくー」
「……よろしく」
トゥルー、ボウラン、アーサーの順で挨拶をしていく。俺は無表情で特に反応をせずに静かにたたずむ
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