日記2
●月※日
今日は何度目かの体育の授業があったが、いつも通り女子の中では無双状態である。
見た限り、男子ですら半分以上は相手にならなそうなのだ。さもありなんと言ったところか。
ここ最近のトレーニングの成果も感じられる。ランニングは相変わらずつまらなく感じるが、ダンスのためには体力が必要だ。頑張って続けて行こう。
●月◇日
今日、あの「浅倉透」とすれ違った。
凄まじいオーラだった。相手は俺のことなど何も意識していなかっただろうが、完全に魅了されてつい立ち止まってしまった。
彼女もまた、後に283プロダクションに所属することになる未来のアイドルである。
あさひとはまた違った形の才能の塊であり、外見やオーラといった点では別格の扱いを受けている浅倉をこの目で見れたのは、アイドル「芹沢あさひ」にとって非常に良い経験であった。
俺ならば、彼女すらも糧にできる。
●月∂日
浅倉透を見かけて以来、「自分の見せ方」についてよく考えるようになった。
ゲーム的に言うならば「ビジュアル」のステータスについてだろうか。
カメラの位置を意識した動き、ポーズの取り方、自然な笑顔の作り方エトセトラ……。
化粧技術などはさておき、こういったスキルは磨いておいて損になるものではない。
黛冬優子が良い例である。
彼女は幼少期の経験から自身の本性を隠すことを決め、どのような人物が他人に好かれるか徹底的に研究した。その結果が「ふゆ」というキャラクターであり、プロデューサーに暴かれるまで貫き通してきた鉄壁の仮面でもある。
そんな彼女は自分の見せ方というものが非常に上手い。誰にどう見られているかというのを把握する能力に長けているのだ。
ある意味、最も人の視線がどういうものかわかっている人物とも言えるんじゃないだろうか。
ただ、浅倉透のそれは違う。
彼女のそれは天性のものである。彼女の何気ない仕草、動きの一つ一つが人の目を惹くように完成されている。
黛冬優子の計算されたそれとは全く異なり、それでいて遥かに上回る力。おそらく彼女は何も意識せずとも体がそうなるように動いてしまっているのだろう。
アイドル「芹沢あさひ」が手に入れるべき力はそれだ。
技術などで再現できるものではない、生まれ持った才能であることに違いはないが、あさひも同じく才能の怪物。
一度見ただけの動きをコピーするどころか、本家本元を上回ってしまうほどの「模倣」の才。
それがあれば、浅倉透のオーラだって奪える。
そのオーラがあれば「芹沢あさひ」はまた一つ次の段階に進める。
また俺は、「芹沢あさひ」に相応しい存在に近づける。
●月○日
やはりと言うべきか当然と言うべきか、浅倉透の「オーラ」習得には苦戦している。
目にした回数がすれ違った一回のみというのは模倣の天才であるあさひにとって何の問題にもならない。練習すれば必ず習得できるはずである。しかし、流石に習得難度はダンスの振り付けなんかとは大違いだ。
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