ハーメルン
【悲報】私、加茂憲倫。女子に転生してしまったので一族繁栄目指す(完)
第12話 憲倫くんのお節介

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双子岬。
地元の人間からそう呼ばれる岬があった。高所から海へ突き出した場所で、更にそれが2ヶ所並んでいるという、まさに『双子』の岬である。
そして、そこは自殺の名所と言われており、ここで命を断つ者は必ず番いであるという。それは男女のこともあり、兄弟姉妹や親子の場合もある。
ただし、命を断つのは同時ではなく、番いの片方がここから飛び降りた数日後に、もう片方もまるで誘われるようにここから身を投げる。時間差で襲いかかる呪い。
そのような調査結果が呪術高専に挙がっているらしい。


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「だからといって、私らを派遣するのはどうなんだ?」


現地にて、周辺の調査をしていると、真希はそれを口にした。
その不可解さは呪いが関わっているのは十中八九間違いないだろう。だから、呪術師が派遣されるのは当然の流れ。
真希が言っているのは恐らく、


「こんな出涸らしと一緒に任務なんて、悲しくなるわ」

「……私ら以外にも兄弟姉妹の術師なんていくらでもいるだろ」


お世辞にも仲がいいとは言えないこの2人を組ませるのは確かにいい判断とはいいにくい。会って間もない私ですら感じるのだ。憲紀にそれが分からないではないだろうが、それでも組ませたのはもうひとつの理由があるからで。


「派遣された呪術師は悉くその異常を発見できていないというのだから、呪力のない君が派遣されるのは納得といえば納得だ」


憲紀曰く。
ここに調査に訪れた呪術師の前に呪霊は現れなかったらしい。恐らく呪力をもつ者を警戒して出てこない臆病な呪い。
その類いの呪霊は厄介だ。呪殺よりも自らの生存を優先する。呪霊に生存というのもおかしな話ではあるが。
……それにしても、だ。


「あの人もあんたを指導役にするなんてよく分からないことするわね」

「……まぁ、それには同感だな。指導役なら他にいくらでもいるだろうに」

「誰であろうと、あんたよりはマシよね」

「否定はしねぇよ」


この姉妹のやり取りを聞いていると、妙な感覚に襲われる。なんだろうか、仲は確かに悪い。だが、真希と真依の間には互いへの感情に温度差があるような気がしていた。


「少し聞いてもいいか?」

「ん?」


双子岬の右側を真依が調べているのを見ながら、私と真希が左側へ向かったそのタイミングで、彼女に話を振る。恐らく真依だと話をはぐらかされるだろうと考えたからである。


「君たちは仲が悪いんだな」

「……まぁな」

「なぜ仲が悪いんだ?」

「……仲の悪い姉妹なんて、いくらでもいるだろ。それと変わらねぇよ」


勿論、明治も今も仲の悪い兄弟姉妹はいるのだろう。だが、彼女たちのそれは少し違う気がしていた。
だから、なんとなく立ち入った話をしてしまう。これは好奇心というよりはお節介なのかもしれない。


「私は……あいつに黙って家を出た」


心当たりといえばそのくらいだ。詳しくはあいつに聞けよ。
そう真希は言った。
家を出た理由とか、真依に言わなかった理由とか。気になることはあったが、私と彼女は知り合って間もない。これ以上聞くのは少々憚られる。

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