ハーメルン
【マンガ1巻発売中!】攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─
本音だけど建前でもあります。
名前 山形公平 レベル15
称号 ワークライフバランサー
スキル
名称 風さえ吹かない荒野を行くよ
名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た
称号 ワークライフバランサー
解説 日々を営み、為すべきを成す。あらゆる生命の、これは輪廻
効果 日常生活時、再生能力付与。戦闘時、耐久力にボーナス付与
《称号『ワークライフバランサー』の世界初獲得を確認しました》
《初獲得ボーナス付与承認。すべての基礎能力に一段階の引き上げが行われます》
《……救いも為しつつ、けれど今ある生も楽しんでください。あなたが今を愛しく思うほどに、時代は報われていくのです》
「何これぇ……」
新称号の解説を見て、俺はシステムさんの優しい心遣いに感涙なぞ一切流さず、むしろ戦々恐々とした心地で考察を始めていた。
これはまた、ずいぶん方向性を変えてきたもんだ。なんだろう、アメとムチとかそういうアレなんだろうか。
魂を救えだの邪悪なる思念へ特効! だのムチで一通りしばき上げた後、ワークライフバランス! なんてアメを与えて、それこそバランスを取ろうとしているんだろうか。
の割にはしっかり戦闘時のボーナスを付与してくるのだから、システムさんの優しい言葉の裏にある、『これでしっかりとダンジョン探査できるよな?』的な圧を感じなくもない。
『救いも為しつつ』って前置きがあるところとか特に。
システムさんはブラック上司だった……?
しかし今度は何がきっかけなんだ。ここ数日、いくつかダンジョンには潜っていずれも踏破した──例によって御堂さんの撮影付きだ。ちなみに動画再生数は死んでるらしい。御堂さんのチャンネルじゃなく新規で開設したチャンネルで配信しているんだから、そりゃさもありなんってやつだわ──のだが、そのタイミングでは称号は変わらず《魂を救う者》だった。
て、なるとあれか。なぜか俺だけにあるやつ、非探査中に称号が変わるやつか。
以前はたしか、関口くんに思わず嫉妬した時に諌められるように称号が変化したんだ。《輝きに気づいていない人》。
そして矢継ぎ早に、広瀬さんや新川さん、烏丸さんの話をリアルタイムで聞いていることを示す形で、《新たな時代をもたらす人》に変わったんだよな。
この辺は完全にダンジョンの外の、日常生活の延長みたいな場面でのできごとだ。今回の《ワークライフバランサー》もご多分に漏れず、普通に生活を送っていたらいつの間にか変わっていたんだろうな。
「ワークライフバランサー。ワークライフバランスを上手くできている人、って解釈でいいのかな……?」
自分で言うのも難だけど、たしかにここ数日はすごく調子が良い。
親孝行もできてるし、学校生活も良い感じだし、かと言ってダンジョン探査を疎かにしているわけでもない。どちらかに偏ることのない、ある種のニュートラルな暮らしぶり。
それがシステムさん的には気にいったんだろうか? アナウンスから察するに、別に非難されているとかって感じでもないしな。
学校もついさっき放課後を迎えた。今日はダンジョン探査は一休みして、クラスのみんなとカラオケだ。ドレミファソラシドもまともに言えない俺様の美声に酔い痴れるが良い。
だけど並行して、御堂さんと広瀬さんにも連絡はしておく。御堂さんは毎度ながらこの間、広瀬さんからも直通で連絡先をもらっているのだ。
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