3話
ただ、行動は速い。
木造の壁を拳でぶち破り、アサシンの腹部に一発。
「グギっ!」
アサシンが大きく吹き飛ばされる。
もろにくらったんだ。ダメージとしてはそれなりにあるだろう。
少し後退したすきをつき、血まみれの男性の体を持ち上げキャスターに押し付ける。
「頼んだ」
それだけ告げるとキャスターは、納得したのか
「誰かは知らないけれど、恩に着るわ。やつはアサシン。わたしが召喚したアサシンを媒介に誰かが召喚したんでしょう。いずれにせよ、この夜闇だと厄介よ」
「紹介ありがとう。ただ早くしないとそいつ死ぬよ?」
「...そうね。失礼するわ」
キャスターが姿を消し、アサシンと一対一になる。
呼吸を整え、目の前の敵に一点集中。
鼓動と風の音がやけに大きく感じる。
お互いが緊張の中、見つめあっている。
先に動いたのは...
「ゲシャ!」
アサシンだ。
寺の壁を破り、森へ向かって消えていく。
...明らかに罠だ。
しかし、ここを見逃せば次奴と対峙するのはいつかわからない。
今ここでたたいたほうがいい。
心の中で言い訳を溢す。
我ながらひどい矛盾と詭弁だ。
っと無駄なこと考えている場合じゃない。
さっさとアサシンを追おう。
森の中に入ると、そこはまさしくアサシンの独壇場だった。
うっそうと茂る木々。風で揺れる葉っぱと独特な空気。
すべてが己の敵とすら思える。
「シャアっ!!」
木と木の間から影が跳躍し、何かがこちらに投げつけられる。
反応が遅れ、回避が間に合わない。
飛んできたのは3つ。うち1つに被弾してしまった。
右足の太腿に何かが刺さる。
「痛っ!」
暗い中、刺さったものを確認する。
「ダーク...」
中世で暗殺などに用いられていた武器。
アサシンにはぴったりではある。
幸いにも毒が塗られている可能性はなさそうだ。
緩んだ気を引き締め、呼吸を整え闇を見つめる。
アサシンとはいえ、相手はサーヴァント。
強大な力を持っているならとっくに僕は死んでいるはずだ。
それができていないなら、なにか理由がある。
例えば...強力な武器を持ち合わせておらず、
切り札が宝具しかない。
現状ではこれが一番有力だろう。
聖杯戦争という殺し合い。
手の内を見せずに殺せるならさっさとそうしている。
「シャアっ!!」
また暗闇からダークが迫ってくる。
今度は回避行動をとることができた。
しかし、何本かかすってしまう。
ダークがかすった部分の衣服が破れ、血が流れる。
このままではジリ貧だ。
キャスターを待つにしても帰ってくるかもわからない。
こちらも出血がひどいのでさっさとケリをつけなければ。
考えろ、相手にはなにが有効か。
感じろ、相手にある隙を。
生きるか死ぬか。
終わるか終わらないかの瀬戸際なんだ。
ここでやらなきゃ、死ぬだけだ。
神経が研ぎ澄まされる。
「ギシャシャ!!」
小さな風を避けるような音とともに、ダークと大きな影が迫る。
[9]前 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:2/5
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク