ハーメルン
ウマ娘全てに愛を振り撒くデジたんと、そんなデジたんに自分だけを見て欲しいと考えるウマ娘概念
どこかいつもよりも張り切っているデジたんと、そこに興味を抱くタキオン概念
その日、アグネスタキオンはいつもよりも少しだけ大きい物音によって目が覚めた。うるさかったわけではない。ただ、どこかいつもと違うというその差異からふと目が覚めてしまったのだ。
時計を見ればいつも起きる時間よりも少しだけ早い。一体何なんだろうと身体を起こして辺りを見回すと、同室であるアグネスデジタルがせっせと何かを準備しているのが見えた。なんだか普段よりも────普段も割とアレではあるものの──落ち着きがないように見える。まるであることが楽しみで夜眠れない子どものようだとタキオンは思った。
「あ、タキオンさん! おはようございます! すみません、起こしちゃいましたか……?」
「おはよう、デジタル君。なに、いつもよりも少しだけ早かっただけさ、気にしなくてもいい。ただ──」
眼が徐々に覚めてきたようでだんだんとはっきり部屋の景色が目に入ってくる。その際に感じる先ほどからある違和感。そこを聞いてみることにしたようだ。
「なんだか張り切っているね? 今日は何かあるのかい?」
これまで割と長いことデジタルと同室で過ごしてきたタキオンであったが、朝からここまでそわそわしているところは見たことがなかった。レースやライブを見に行く朝でもここまでではなかった。完全に目覚めていない頭で今日何があったかを考えてみるが特にこれといって思いつかない。
「はい! 今日はですね、選抜レースがあるんですよ!」
満面の笑顔で問いに答えるデジタル。答えはもらえたものの、タキオンの疑問は尽きない。
選抜レース、確かにこれはデジタルにとっては一大イベントの一つではあるのだろう。だがそれだけがデジタルをあの状態へ至らせたわけではないはずだと考える。加えて注目の選手が走るというのは耳にしていない。もし有望そうな子がいるならば噂として今日に至るまで耳に入ってきていないのはおかしい。つまり、本当にそれだけなのかという疑問が新たに出てきたのだ。
「それにしてはいつもよりも興奮気味に見えるねぇ。どうしてだい?」
学園のウマ娘の情報に関してならば下手な者よりもデジタルに聞いた方が正確に答えてくれる。もしかしたら自分の知らなかっただけで先の情報があったのかもしれないと思い、再度デジタルに聞く。
「え、あたしそんなに興奮気味でした?」
これにデジタルは自覚がなさそうに発言。演技をしている様子がなさそうなことから、本当に素であんな風だったとわかる。これにおや? と思うところはあったものの、深く追及はしないことにしたみたいだ。
「いや、見間違いだったかもしれない。すまないね。ところで、そのレースには何かあるのかい?」
一旦デジタルのその様子についての話は置いておいて、レースの中身について問う。すると再び満面の笑みを浮かべてデジタルは答えた。
「ええ、そうなんですよ! ナナさんが出るみたいですから!」
「ナナさん……?」
少し思考をして、デジタルの言う『ナナさん』の存在はなんだったかを思い出す。
「──あぁ、『ナナシノゴンベエ』か」
『ナナシノゴンベエ』。黒髪ポニーテールで、身長体重等は平均的、性格は普通に良い人という感じの、見た目も中身もまさにどこにでもいるような平凡なウマ娘。しかし彼女は多くの者にその名前と顔が覚えられている。それは『アグネスデジタルの幼馴染である』ということだ。
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