ハーメルン
ウマ娘全てに愛を振り撒くデジたんと、そんなデジたんに自分だけを見て欲しいと考えるウマ娘概念
ちゃんとした気持ちになるまで避けようと決めたデジたんと、急に避けられてしまいどうすればよいのか分からず助言を求める幼馴染みオリウマ娘概念

 ……最近、デジちゃんに避けられてる気がする。今までみたいに近づかせてもらっても急な用事で離れられたり、そもそもデジちゃんを尋ねに行ったらもう既にどこかに行ってしまったりと、前みたいにデジちゃんと一緒に居れてない。
 忙しいのかな……? 確かに忙しいならそっちを優先してほしいんだけど、ちょっぴり寂しいし、どんな用事なのか気になる。……考えたくはないけど、別の可能性だってあるから。

 ──きらわれた。

 最悪の可能性が過る。寒気が止まらない。すぐに首を振る。そんなことない。だってわたし、何もしてない──、

 ──ほんとう、に?

 ……否定、できない。思い起こされるデジちゃんにかけた数々の迷惑。ライブでの人酔い。選抜レースでの無様な転倒、喘息の発症……挙げればキリがない。それでもう嫌気が差してきたんだと言われちゃえば納得せざるを得ない。

「ハァ、ハァ、ハァ──」

 呼吸がだんだんと荒くなってくる。壁に寄って胸に手を当てて大きく深呼吸。少し、落ち着いてきた。

「はぁ……すぅ、はぁ……」

 でも、まだ分からない。もしかしたら考えすぎてる癖があるのかもしれない。そうだ、もし本当に用事があるんだったらこういうことはまだ起こってないはずなんだ。そう、思いたい。安心したい。
 でも本人にそういったことを聞こうにも、避けられちゃってるんだから聞けない。離れるときも、ちゃんと理由をこっちの気を悪くしないようにして言ってくれてるのが逆にわたしを苦しめる。教えてくれればこっちから少しの間接触を避けるのに。我慢できるのに。

 知りたい。だけど今のままなら知れない。なら、他の誰かに聞くしかない。
 でも、誰に? デジちゃんは他のウマ娘ちゃんの邪魔にならないようにと極力接触を避けてる。ダイワスカーレットさんやウオッカさん、スマートファルコンさんとかところどころかかわりを持ってる方々もいるけれど、その時間は多分長くないはず。出来れば、よくデジちゃんと話してたり比較的デジちゃんのことを知っている方からの話を聞きたい。でも、そんな方なんて……。

「おや、ナナ君。奇遇だねぇ」
「! タキオンさん……」

 考えながらさまよっていると、偶然タキオンさんに出会った。あの日薬を頂いてから、デジちゃんについての話を月に一回するという、本当にこれでいいのかという条件の下、喘息の薬を定期的に頂けることになった。大した労力ではないとのことだけど、なぜか薬局とかのより抜群に薬が効くから頭が上がらない。

「おや、なんだかあまり今日は元気がないみたいだね。どうしたんだい?」

 そっか、そういえばタキオンさんはデジちゃんと同室。それにある程度話す仲でもあるって聞いた。もしかしたら、何か知っているかもしれない。

「あの、今ってお時間大丈夫ですか?!」

 考えてすぐ、気が付いたら言葉に出して聞いていた。自分でも驚くくらい必死な感じだった。

「今かい? 少し待ってくれ」

 スマホを取り出して何かを開き見るタキオンさん。何かを見た後スマホを仕舞って再びこちらを見る。

「今日はもう特に急ぎの用事はないね。何かあるのかい?」
「あの、聞いてほしいといいますか……相談したいことがあるんです」
「なるほど。なら──あの部屋に行こうか。着いてきたまえ」

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