ハーメルン
癖馬息子畜生ダービー =遥かなるうまぴょいを目指して=
天皇賞 春、 黒い舎弟
「海外遠征?」
「そう、メジロ家がサポートするので、どうでしょうか? ……と言う話を頼まれまして」
椅子に座り自前で用意した紅茶を優雅な仕草で飲みながらマックパイセンはそう言った。
「なんでまた?」
「まぁ、名家のしがらみと言いますか」
今年からURAが海外遠征に積極的な姿勢を見せているので、色々と幅を聞かせてるメジロの家としても後援した実績の一つや二つは持っておきたいとかなんとか。
そんな小難しい理由は別にどうでもいい。
重要な事。
それは。
「人の金でタダ旅行かー」
「わたくしとしては別にその認識でもいいんですけど、ウマ娘として少しは興味ありません? 凱旋門とか?」
凱旋門。
知っている。
そう。
「あの……なんか。すごいレースでしょ」
「具体性の欠片もない見解で逆に安心しましたわ」
日本のレースなら授業でやったが、海外のレースとか多すぎて覚える気にならなかったのだ。
まぁ、観光がてら寄るのもいいかもしれない。
とは言え、問題もある。
「行くのはいいけどさ。イギリスってご飯、美味しくないんでしょ?」
「…………え? あ。……ロンドンにもウェントンアーチと呼ばれる凱旋門があるのですが。私の言う凱旋門賞が行われるのはフランスですわ」
ロンドン。
聞いたことがある、よく橋が落ちてる所だ。
フランス。
知っているぞ、RPGに出てくる街みたいな所だ。
しかし、同じヨーロッパにも色々あるらしい。
世界は広い。
「……フランスのご飯は美味しいの?」
「フランス料理ですわよ!? フランスは美食の国と言っても過言ではありませんわ! なんでイギリス料理のことを知っていて、フランス料理を知らないんですか!?」
「ネットで得た知識だから!」
「なぜ誇らしげに!?」
ネットの深淵は高尚な知識よりも、笑えるネタの方が広い情報を得られるのだ。
つまり、フランス料理とやらはネタにならないくらいの味だと言う事だろう。
「そのフランス料理とは、何カップ麺くらいうまいの?」
「……その単位が意味不明なのでわかりませんが。今度、わたくしの家でディナーでもご馳走しますよ。本物のフランス料理と言うものを教えてさしあげますわ」
「流石、パイセン太っ腹ー!」
「ふ、太くありませんわ!」
「え?」
「え?」
「……」
「なんで黙るんですか!?」
正月が開けてからパイセンは少し丸くなった気がする。けれど、気のせいなのかもしれない。
そうだ、きっと本人が自分の事を一番わかっている筈だ。
私が出る幕ではない。
「パイセンは太ってなんかないし、裏表のない素敵なウマ娘です」
「なんか言わせたみたいになって凄い抵抗があるんですけど……まあいいですわ」
いつの間にか立ち上がっていたパイセンがスカートを整えて座り直す。
「次は天皇賞ですわね。……貴方の調子はどうです?」
「変わらんですわ。いつも通りって感じ」
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