ハーメルン
癖馬息子畜生ダービー =遥かなるうまぴょいを目指して=
放牧なう
賞金的には出なくても菊花賞に出走自体はできると思うが、それも確定ではない。
何よりブラックロータスには腹を括り戦うだけの力がある。
避ける必要はない。
「同世代なんだし仕方ない。実力と話題性なら負けてないしな」
「ロータスはバッシングもすごいですけど、コアなファンは増えましたよね。この前、大学生のファンが作ったパソコンのサイトとか言うの見せて貰いましたけど、なかなか面白かったですよ」
「ほー、そんなんがあるのか。走ってる動画とかも見れるのか?」
「動画ですか? 一応、見れない事もないらしいですけど、画像だけでも開くのにすごい時間がかかるんですよ」
「なんだ。じゃあ、テレビでいいだろ。ビデオを回せば見れるんだから」
「そりゃそうなんですけど、こう言う新しい技術って、気づけば伸びてるもんなんですよ。今から触っておきたいじゃないですか」
色々と器用なやつである。
高校時代は甲子園まで後一歩のところまでいき、プロを諦めて騎手を目指してこの業界に。
騎手になったはいいが、なんやかんやあってウチに来た。
人生の大半を馬に捧げる合間に投資やらやっており、最終的には自分の馬を持つのが夢だとか。
「そういや、今年の年賀状用にワープロ買おうと思うんだが、おすすめはあるか?」
「それなら、……」
「……」
「そう言えば話は変わりますけど、ロータスの今の騎手なんですが」
「……う」
頭の痛い問題が出た。
「降りたいって言ってましたよ。遠からず、そっちに行くかもしれません」
「マジか……」
以前から、それとはなしに話しが来ていた。
それでもロータスは間違いなく強い馬だ。
ナリタブライアンがいる以上、中距離以上で勝てる可能性のある馬はこいつくらいだろう。
騎手も勝てる馬には乗りたい。
だが、同時に負けた時の理由にされやすい。
進路妨害や落馬など、馬を御せていない、下手と言うイメージがつけば騎手生命にも関わる。
今のロータスの主戦騎手は若手ながら騎乗の上手い騎手だった。
いずれ経験を積めば世話になる事もあるだろう、そう思える騎手。
それだけに惜しい。
それに、ようやく、ロータスと息が合うようになってきた騎手だ。
「菊まで……いや、来年まではなんとか頼めないか?」
「それ、自分がやるんです?」
「お前のが仲良いだろ」
「まぁ、それなりに付き合いがありますけど……」
「しかし、騎手も頭の痛い問題だよ……その内、誰も乗ってくれなくなるかもな」
ロータスは騎手を選り好みする。
これまでにも騎手の話がある度に何人か試しに乗って貰った事があるが、大半が苦笑いして帰っていった。
「博徒ですよ騎手は、勝てる札があるなら乗りますよ」
「……そういや、お前、騎手の免許、持ってたよな」
「その頃の伝手を辿ってここで働いてますからね」
「乗るか?」
「死にたくないんで嫌です」
「……」
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