9話『能力?』
スポーツには二種の国代表が存在する。フル代表と世代別代表の事だ。
フル代表は放送権を得てテレビに良く映るので知っている人も多いだろう。その国の国籍を得ていれば、在住期間。或いは血の繋がりという規定を満たす事によって選ばれる、年齢規制の無い代表選手達を指し示す。
そして次に世代別代表。此方は聞き覚えはあっても積極的に見る人というのは少なくなる。例えば五輪代表によるオリンピックの試合を観る場合はあるだろう。しかしそれが年齢規制によって成り立つ試合である事実を頭に入れているという人は存外に少ない。
それは偏に注目度の差だ。
オリンピック、ワールドカップ。そういう名の高い数年に一度の世界への挑戦というのは、非常に注目度を集めやすい。少し悪い形で言ってしまえば、そのスポーツにさほど興味のない人達をも観戦させる。
そしてもちろん、大会ネームドにも限らず、選手そのものにも注目度というのは存在している。有名な選手というのはフル代表に集まりやすいからだ。
では、世代別代表とは何か。一括りに世代別代表と言っても西暦によって何処に年齢規制が掛かるという訳ではない。勿論西暦によっては予定のない世代というのも存在はするが、基本的にU-15〜U-23までの全ての世代が一年間の中で予定が組まれている。
だがここで勘違いしてはならないのは、必ずしもその世代の選手だけが選ばれる訳ではない事だ。
世代別代表とは、Uで区切られた規定年齢以下の選手を対象とした選手達の事を指し示すものである。
例えばU-15であっても14歳、13歳の選手なんかが選ばれる事もあるし、U-23で16歳という7歳差であっても選ばれる事例だって存在する。
ただしこれはあくまで規定。大学年代に相当するU21〜23は18、19歳の選手を呼ぶ事もあるが、U-18で16歳以下の選手を呼ぶという事はそれほど多くない。
理由は単純明快。能力の差である。
中学生から高校生というのは、色々な能力が大きく成長する期間だ。身体能力という面でこそ小学生の第一次性徴、第二次性徴の方が大きく上り坂となるが、思考能力や気持ちの強さなど、そういった精神面での成長も合わさると、やはり中学年代と高校年代には格差というものがある。
高校年代と括りはしたが、この15〜18歳という中だけでも違いというのはハッキリと出るものだ。体格差、思考能力。なによりも経験差。才能の有無に関わらず、人間である以上は必ずこの項目に違いは出る。
なので年齢規定ギリギリの選手が選ばれるのが、世代別代表の普通とも言えるだろう。
ただし、圧倒的な才能というのはそれをひっくり返す。常識とは非常識があるからこそ常識なのだ。
さて、日本の至宝とも呼ばれる逢沢 傑───此方はU-18にすら呼ばれる逸材だ。その一つ下の世代に呼ばれる事にはなんら不思議はなく、練習内容について来れる事になんら不思議はない。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/8
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク