1話
薄暗く一寸先すら見透すことが困難なとある森の中を二つの影が駆ける。両者ともに背丈は五.六尺程であろうか。だが、決定的に違うところがある。
それは一方の影が無手であるのに対し、もう一方の影には刀らしきものが握られている事だ。
「はぁ・・・!はぁ・・・!くそっ!こ、このままじゃ・・・!人間ごときに・・・!」
「・・・・・・・・・・・・」
そうやって自身に迫り来る圧倒的な恐怖に対し、無意識のうちに愚痴のようなものが零れてしまう。
(だいたい、なんだってんだよっ!なんで俺がこんな目に・・・!鬼であるこの俺様が・・・!)
そうした焦りもあったのだろう。背後から迫り来る影に気づくことはなかった。
「───────『氷の呼吸 壱の型 初雪』」
囁くように発せられた言葉のすぐ後に一筋の光が煌めき、影の頸が宙を舞った。
「カァー!カァー!白夜ヨクヤッタ!」
夜の空を舞う烏が少年を労う。
しかし、白夜と呼ばれた少年はそれに言葉を返すことはなく、首を一回縦に振るのみであった。
「白夜、今日ノ任務ハ終了ダ!」
「・・・・・・・・・了解」
そうして、彼らは帰るべき家へと澄んだ空のような色をした羽織を翻し歩き始める。
少年の翻った羽織から顔を覗かせるのは『滅』の一文字。それ即ち、彼が『鬼殺隊』の一員であることを示していた。また、彼の頭上を飛び回る言葉を話す特殊な烏である『鎹烏』も彼が鬼殺隊の一員であることを示唆しているだろう。
「トコロデ白夜」
「・・・・・・・・・ん?」
「オレニモ見エヤスイヨウニ鬼ヲ狩ッテクレナイカ・・・?」
「・・・・・・・・・ぜ、善処する」
少年は言えるはずもなかった。先程の攻撃も手心を加えたものであったことを。それも多分に。
いや〜!疲れたよ〜!なんたって、今日一日だけで7体も鬼を狩ってるし・・・。
にしても、雪丸も基本優秀なんだけど優秀過ぎて任務を流れ作業のようにさせるのが難点だな。それさえなかったら、伝令とか敵の発見とかも手早くやってくれる良い相棒なんだけど・・・。もうちょっとこっちの体力も考えてほしいなぁ。
え?なんかお前めっちゃしゃべるな。って?まあ、俺は基本おしゃべりだしね。けど、なんか知らない間にクールな無口(笑)キャラみたいなポジションになってたんだよなぁ。なんでだろ?考えられるとすれば・・・。
「おーい!白くーん!!」
誰かが後方から大声を発しながら屋敷の廊下をこちら目掛けて駆けてくる。というか、誰かなんて言わなくても分かっているのだが。
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