幼女を育成する程度の能力(改)
マチママいわく、どうやらトルテは迷子であるらしい。
彼女の家が見つかって迎えが来るまでの間、うちで預かることになった。
彼女と一緒に暮らすことによって、俺は新たな恩恵を得ることができた。
そう。料理である。
流石によそのお子さんに毎食ミルクを提供するのは躊躇われたのだと思われる。
昼食には、ミルクを使った固形物が出るようになった。
料理とは複数の美味しい食材を合わせて、さらに美味しい食物を作ること。
美味しいミルクと、ミルクほどではないがそこそこ美味しい別の食材を組み合わせることで、ミルクに勝るとも劣らない食品を作ることが可能となるわけだ。
キメラアントが人間と別の動物をまぜまぜして、もっと強い生物を作るのと同じ理論である。
俺は今まで何も分かっていなかった。
ミルクには無限の可能性がある。
すなわち『ミルク=∞』という数式が成り立つわけだ。
∞+1=∞、∞+2=∞、そして∞+3=∞と続いていく。
ミルクの素晴らしさは新しい要素を足し合わせても劣化することはない。
決して色あせない輝きがある。
ダイパリメイクとは違うのだ。
トルテのおかげで、俺は料理という新しい概念を得たわけだが、その他にも大きな恩恵があった。
それは、対人戦の訓練ができるようになったことだ。
俺は年齢の関係で身体が小さいので、同じ体格の相手というのが存在しなかった。
幼児の念能力者というのは非常に少ないらしい。
ちなみにトルテは普通に使えた。
マチママは最近弟子をとることにしたらしく、その弟子と俺を戦わせようとしたこともあったそうだが、変な癖がつくと良くないのでやめたそうだ。
まあ、普通に考えて自分よりずっと大きい人型生物と戦う機会なんてあまりないだろうし、その判断は妥当だと思われる。
俺はトルテと正面から対峙する。
ルールは簡単。なんでもありの格闘戦。
ただし目潰しと噛みつきは禁止とした。
古代ギリシャのパンクラチオンと言えば、誰もが理解できるだろう。
両手の拳を軽く握る。
拳を強く握るのは相手に攻撃が当たる瞬間だけでいい。
当身をした瞬間、小指側の屈筋を利用して素早く腕を引き戻すことで、攻撃後の隙を小さくする。
俺とトルテとの間の距離は約5メートルほど。
普通の武術家からは遠間と表現される間合いだが、念能力者にとっては十分に近間である。
下半身に攻撃が来たら、蹴りで迎撃する。
足に体重が乗りすぎていると蹴りが遅くなるので、蹴る場合は右足と決め、体重は左足に七割、右足に三割ほどかかるように調整した。
腰を落として重心を下げると同時にわずかに右足の踵を床から離し、いつでも蹴りを放てるように準備する。
上半身に攻撃が来ても良いように、右の拳を顔の前に掲げ、左の拳は顎の下あたりの位置におくことで守りを固めた。
そのままの状態で一切動かず俺は相手の攻撃を待つ。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク