ハーメルン
ゆるふわ芦毛のクソかわウマ娘になってトレーナーを勘違いさせたい
9話:未勝利戦の結末

 徹底的なトレーニングを行いつつ迎えた8月1週目の週末。

 東京レース場、第3レース。2000メートルの左回りで行われる2度目の未勝利戦は、ギラつく太陽の下で行われることになった。前日に雨が降っていた影響か、湿度の高い嫌な快晴である。

 気温は今年初の30度越え。良バ場の発表となった。

 この舞台において、ゲートに入るのは8人。当然ではあるが、1着を取れるのは8人の中でただ1人だ。メイクデビューにせよ未勝利戦にせよ、俺達は最低1回でも勝たないと1勝クラスに昇格することはできない。

 ジュニア級においては、未勝利クラスの次に1勝クラスがあり、そして1勝クラスのレースで勝てばオープンウマ娘になることができる。オープンクラスまで上り詰めれば、獲得賞金の関係で除外されない限りは全てのレースに出走可能になる。

 ウマ娘はより多くの勝利を上げることが大事だ。敗北が積み重なれば様々な障害が出てくる。ライバルに差をつけられる焦り、勝ち方を知らないために起きる僅差の敗北、やる気の低下、などなど……。

 あまりにも敗北が積み重なると、()()()()()()()()子もいる。ナイスネイチャ……はちょっと違うかな? あの子は未勝利クラスで燻る程度の才能じゃないし……。

 どんなレベルにせよ敗北というのは辛いものだ。自分ひとりだけで戦っているならいいが、俺達には背中を押してくれる家族や、親身になって支えてくれるトレーナーがいる。

 自分を支える者の重圧に耐え切れず、ウマ娘の中にはデビュー戦の敗北ひとつでトレセン学園を去る者もいると聞く。まぁ、メイクデビューで掲示板外だった場合、余程のことが無ければ重賞で勝つなんて出来ないだろうから……気持ちはわからなくもない。

 今日負けたら、俺はどうなってしまうのだろう。ほとんど賭けに近い暴挙を押し通してしまった。トレーナーのためにも敗北は許されない。

 会場入りした俺達は、早速控室に向かった。とみおは先程からそわそわしていて、何度もウマホの電源を付けては消して、ポケットに出し入れしている。3度目のレースとはいえ、今回は重みが違うのだ。彼もまた緊張しているのだろう。

 俺は鏡の前に立ち、緊張を解すためにぺちぺちと両頬を叩いた。

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