もう好きに生きるぜ!
シスがガッツを拾っちまった。
カルテマ曰く吊られてた妊婦の骸から赤子が流れ落ちて、産声をあげた、と。
そんでそっちに気を取られた隙にシスが馬車から飛び出してきて止める間もなくその子を抱きかかえて離さなくなってしまった、ねぇ。
…っかしいな、ガッツ拾う流れってそういう感じだったっけ?
確かにあの場所には複数木があって同じように人が吊られてたけどよ…。
冗談キチィぜ。
ロシアンルーレットの当たりを引いちまったって事じゃねぇか!
まぁ分かってたさ、あの景色を見た時に「まさか…」って察したんだからよ。
思えば本当にふざけた人生だった。
ガンビーノとしてこの世に生まれ育って40年と少し。
今更になって前世持ちだったと気付いたところで運命の死を回避するには余りに遅すぎる。
その日その日を生きるだけでも必死なのに俺の道は墓穴にまっしぐらと来たもんだ。
詰みだろ、こんなん。
「くそッ…ちくしょう……ッ…………」
天幕の中で声を殺して嗚咽する。
生きたい、死にたくない。いや、生き物なればいずれ死ぬ。だがいつ死ぬか分からぬから明日を思えるのであって、死期が確定してる今はそれしか見えない。
どうしようもない…
いや、まだ手はある。
ガッツを殺してしまえばいい。まだ赤子だから簡単な事だ。
皆が寝静まった頃にでも殺っちまえば分かるまい。
死人から生まれ落ちたガキだ、長生きできるなんて誰も思っちゃいない。
だがそうまでして生きながらえて何になる?今の俺は傭兵であり、傭兵団団長であり、ガンビーノなんだ。
それにシスからガッツを奪ったらシスはどうなる?俺を恨むか?いいや、きっと壊れちまう気がする。
ならどうする?ガンビーノとしてじゃなくて "俺" 個人としてどうしたいか、決まってる。ガッツは殺さない。
ああそうだ、ガッツはまだ赤子だ。
人格形成も歩むだろう未来も、きっと変えられるはずだ。俺自身の未来はもう変わらないだろうがガッツなら…。
きっと俺はガッツに討たれる。いつか、どんな状況かは分からないがその運命は変えられないんだと思う。
それは仕方ない。
未練タラタラだし死にたくなんて無いけど無様な死に方だけはしたくない。
これは俺の最後の、「どうせ死ぬなら」の意地だ。
決めたぞ。
ガッツに俺が出来る限りの教育を叩き込むんだ。
剣以外の道を示してやろうじゃないか。文字、歴史、数学、医学、道徳…はちょっとアレだが生きる道の選択肢くらいは増やしてやっても悪くなかろうよ。
「ああ、クソッ!やる事増えたじゃねぇか!」
でも悪かねぇ。
俺が死ぬまでにガッツをいっぱしに育て上げてみせる。
原作云々なんざ知るか!ガンビーノらしく生きるなんてもう終いだ。
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