篠ノ之束はクズである。【下】(3)
東京大空襲における40万発の焼夷弾、ナチスドイツが放ったV1、V2ロケット合計3万発と比べたらあまりに少ない数である。
弾道ミサイル3000発による飽和攻撃という、防御不可能な最悪の行為に恐れを抱かぬ者はいないであろう。
空を飛翔し、乱れ飛ぶミサイルの群れ。あまりに現実感のない光景は着弾による衝撃と爆発によって、初めて現実だと認識される。
攻撃を受けたという事実。事実を真実に変えるには、より多くの人々に目撃されなければならないのだ。
「3000発…………?」楯無氏の眼が丸くなった。
「3000発なんて無理だろうって思いましたよねぇ。だ、か、ら、ファントム・タスクさんを通じて世界中から短距離弾道ミサイルを買い付けたんですよぉ。これもファントム・タスクさんのお仕事なんですがぁ、ちょっと人民解放軍海軍とロシア海軍とアメリカ合衆国海軍に協力してもらいましてぇ、えすえるびーえむを撃てる限り全部をつーじょーだんとーで撃ってもらう手はずになってまーす♪」
「…………それは、テロですら……戦争……」
「戦争? そんなものは起こりませんよ? だって、今回のプロモーションに参加した艦艇はぜんぶぅ、自沈してもらうことになってましてぇ、えすえるびーえむとかいう物騒なものは飛ばなかったことになるからでーす。各国の政府はもちろん、日本国政府とも合意済みでーす」
自沈してもらう引き換えとして、ISコアを搭載した攻撃型潜水艦を20年後に就航させる計画だ。ハイパーセンサーを水中音響ソナーとして用いることにより、無音潜航中の通常動力型潜水艦を速射で撃沈が可能となる。シールドバリアと慣性消去装置を船体表面に組み込めば、流体であっても抵抗を極限まで消すことができる。水中であっても、陸上と変わらぬ、それどころか、より高速航行ができるようになる。
「でぇ、どうしてアメリカが同盟してる日本にミサイル撃っちゃおうぜ! ふれんどりふぁいあーおっけー! みたいなことになったっていうのはぁ…………ででーん!」
姉は再び携帯動画プレーヤーのリモコンを取り出した。
沈黙していた携帯動画プレーヤーの画面が明るくなる。
私が事前に製作しておいた動画が再生を始めた。内容は、新しく開発したロボット掃除機の宣伝映像だった。
「○○バのパクリ……」楯無氏の感想はもっともである。
「パクってないもーん!!」
姉が映像を解説しだした。すでに布仏実氏にも解説を行っており、つっかえることなく言い終えた。
「実はこの続きがありまーす! 再生っ!」
舞台はシリア。
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