序幕
「こんなオンボロで本当に対岸まで行けるの…?途中で沈没したりしたら嫌だよ…」
「というか此処、秘密も何も島のおっさんどもが釣りの時に使ってる場所じゃねーか…」
「あぁ…だから小舟が最低限のオンボロしかないんだ…」
「あー!もう!男二人で何をグダグダと…冒険なのよ、冒険!今行くと決めなきゃ、何も始まらないじゃない!それにカイルなら喜んで賛成してくれるわよ、あんた達と違って!」
「いや、まぁ…それはそうなんだが…」
「そのカイルも結局合流できずに置いてきたのはライザじゃないか…」
「う、うぐ!?…いや、だってクーケン港に行けたら会えると思ってたんだもん…」
「お前さてはカイルが漁の繁忙期に手伝いに使ってる小舟を目当てで合流しようとしてたな…」
「そ、そんなことより!まずは対岸に渡るところから冒険は始まるのよ!」
「誤魔化したな…」「誤魔化したね…」
「―――村の連中が行かない場所に挑んだり、街道を辿って先の先まで進んだり、みんなが怖がってる街道の西側を行ったり…」
「ええぇっ!あ、あの辺りは禁足地じゃないか!?危ないだろうし怒られるだろうし…絶対にダメだよ!!」
「なーに言ってんのよ!冒険ってのはそういう場所をあえて踏み越えていくから冒険って言うんでしょうが…それに!北の山の果てに輝いて見えるあの塔にだって…行けたら面白そうじゃない?」
「!!」
「そう思うでしょ、レント?」
「―――あぁ…そうだな…冒険して、強くなって…俺の実力を村の奴らに認めさせる…それが…俺の夢だ!」
「あぁー…レントにまで火が着いちゃった…これは僕も行くしかないのかな…」
「―――分かったら行くわよ!大いなる冒険の旅へ!いざ!しゅっぱーーつ!」
―――――――――何てことないあたしは今日、遂に一歩を踏み出す…
当たり前の生活にないものを求めて――――島の外へ!!!
「―――というわけでレントあんたが一番ガタイがいいんだから舟漕ぎ任せたわよっ!」
「えぇ!?おいおいそりゃないぜ、せめて交代とか―――」
「僕は知っての通り肉体労働は得意じゃないからね―――」
こうして少年少女らは遂に初めて島の外へと踏み出すのであった―――――
―――――――――序幕 完
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