ハーメルン
ライザのアトリエ~たった一つの魔法の言葉~
初戦闘

―――――秘密の船着き場を出た一行は、クーケン島を真っすぐに北上して小一時間、島と陸を繋ぐ船着き場があった。

このまま北上すれば街道があり、商人が行き来する広大な「ライム高原」へと開ける、船着き場からライム高原一帯を通称「旅人の道」と呼ばれている。



「んー…!やっと着いたわねぇー…」


「いやライザお前、船の上で寛いでいただけじゃないか…」


「噂の商人さんは…まだ来てないみたいね…」


「無視かよ…まぁ、いいや、それでどうするんだ?商人が来るまで隠れて待ってるか?」


「何をのんきなこと言ってんのよ、商人を見に行こうとは言ったけど一番の目的は違うでしょ!」


「…何だっけ?」



「もう!島の外への冒険だよ!冒険!!折角だから冒険をしなきゃね!」


「冒険って言ったって…どこに行く気なんだ?このまま街道を辿って北上か?」


「うーん…それもいいけど、街道を辿ると護り手の誰かと鉢合わせしそうだしなぁ…お母さんにバレる可能性が…」


「―――あ、あそこ!あそこから森へと入れそうじゃない?行ってみようよ!」



そう言ってライザが目を向けたのは船着き場を正面に見て東側、岩々の隙間を縫うように細い道が続いている―――奥には木々が見えることから、ライザの言う通り森へと繋がっていそうである。



「―――あそこは…たしか、前にカイルが小妖精の森とか言っていたような…ほら、カイルが稀に薬草を取りに行ってるとか言う…ま、初めての冒険にはおあつらえ向きかもな」


「えぇー…本当に行くの?やっぱやめようよ…きっとろくでもない目に合うよ…」


「そんなの行ってみなきゃ分からないじゃない!―――大丈夫、大丈夫!早速冒険だー!!」






―――――外から見ただけではわからなかったが、少し森の中へ入るとそこは翠緑…いや最早緑が濃すぎる深緑の木々が生え、木の根元には身の丈の倍程もある大きなキノコが群生しているクーケン島にはない別世界となっていた。


「こ、ここが小妖精の森…?こんなに船着き場から近いのに村の人は誰も入らないんだよね…」


「そ、そう怯えるなよ…船着き場のすぐ横の森だぞ?―――ど、どうせ弱い魔物しか出ないさ…」


「ぼ、冒険の第一歩からそんなんじゃ先が思いやられるわね…」


「ラ、ライザだって声が震えてるじゃないか…態々こんな怖い事やってるの、村で僕達だけなんだろうなぁ…」


「これが冒険に挑むってことよ―――さぁ!いつまでも喋ってないで、出発よ!」

「おうっ!」「分かったよ…」





―――そうしてライザ達は森を進み遂に出会う…
背丈は人の膝程はある小柄な流線形の丸いフォルム、大きなクリクリの瞳、青々としたボディー―――そう魔物の代名詞、どこにでもいる割かし謎の魔物、見た目の可愛さから大人子供に密かな人気を集めている―――「青ぷに」である


「で、出たわね、魔物!」


「ほ、本当に魔物だ…本当に、ほ、本物の…」

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