番外編―――在りし日の記憶2
―――アガーテ・ハーマンはここ1年半程前に首都より戻ってきてクーケン島で護り手をしている才女である、かつて騎士になる為、首都へ行き騎士団養成学校で首席の座も勝ち取るも、同期や、騎士達が実力よりも家柄を尊重し自慢し合うだけの生活に嫌気が差し、ここクーケン島へ帰ってきた―――最初の1年は実力を買われとある有力者の息子を護衛していたが、ここ半年は護り手として、家柄、堅苦しい規則等に縛られない充実した生活を送っていた
―――アガーテが休日のある日、ボーデン地区を歩いてると見慣れない子供が、雑貨屋から錆びた剣を買って魔石の森へと走っていくのを目撃する
そんな子供が体格に比べ重いであろう剣に重心を取られ、フラフラしながら歩く様はあまりに危なっかしく、心配になりこっそり後をつけるのだった
そして魔石の森で買ったばかりの剣で拙いながらも素振りをする子供の姿を目撃する、しかし身長120㎝位の体格に鉄でできた60㎝程の剣はかなり重いのかどうにも危なっかしくて見ていられず、思わず声をかける
「―――おい、お前、そんなやり方じゃいつまで経っても剣は上手くならないし、危ないぞ」
その声が聞こえた子供は一瞬ビックリしたものの無視を決め込み、仏頂面で素振りに戻る
しかし、やはり無理があったのか子供の手から剣がすっぽ抜けて、子供自身に向かって当たるその瞬間、アガーテが助ける
「言わんこっちゃ無い…素振りするにしてももう少し歳をとって―――」
「―――…うるさい、ほっておいて…」
「…酷い言い草だな…お礼ぐらい言ったらどうなんだ…」
その声を聞いたカイルは目を少し大きく開き、一瞬思慮した後、小さな声で呟く
「―――…助けてくれて、ありがと…」
「(なんだ、素直にお礼が言えるじゃ無いか、根は悪い子では無いな)―――あぁ、どういたしまして…良かったらここで素振りしている理由を教えてくれないか?今助けたお礼と思ってくれてもいい」
「―――…家族を…今度はちゃんと守る為…」
そう呟く子供の姿を見てアガーテは少し考えを改める、この呟きに込められた覚悟の重さを感じ取ったが故にである―――だから、少し助けたくなった、アガーテ自身も大概なお人好しである
「―――そう…か、ならやはりそのやり方ではダメだ、今みたいに剣がすっぽ抜けた先に守りたいものが居たらどうする?」
その発言を聞いて大きく目を見開いた後、子供は目に涙を浮かべる、その姿を見て慌てて言葉を続ける
「あ、いや、すまない…虐めるつもりは無かったんだ…ただ、その…お前さえ良ければ私が剣を教えてやれる、こう見えて凄腕なんだぞ?」
―――――こうして子供…カイルはアガーテに師事することになった、この出会いが少しずつカイルの心を癒し、いい方向に向かうきっかけとなるのだった
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