ドキッ! 女子だらけのお泊り会。八幡もいるよ☆
やむを得なく千葉ティーを着て風呂に出た後。
俺の次に一色が風呂に入り、現在は由比ヶ浜が身を清めている。⋯⋯こうやって表現すると入浴シーンを思い浮かべてしまうからよろしくないな。
「お、お待たせー⋯⋯」
風呂から出たらしい由比ヶ浜は、何故かためらいがちにそう言いながら戻ってきた。
由比ヶ浜が着ているのは、犬の足のマークがプリントされたナイトウェア。彼女の誕生日にプレゼントした服だ。トップスはフルジップのパーカーなのに足元はショートパンツスタイルという、寝間着なのにちょっと外行きっぽくも見える出で立ちである。
「それじゃあ、私も入ってくるわね」
由比ヶ浜と入れ替わりで、雪ノ下はリビングを出て行った。そうして雪ノ下がいなくなった後も、由比ヶ浜は立ったままだ。
「あの⋯⋯」
由比ヶ浜はナイトウェアと一緒に贈ったナイトキャップをその手に持ち、妙にもじもじしている。そういうことするとスラリと伸びた生足に目が行ってしまうので控えて欲しい。
それにしても、さっきからのこの妙な反応⋯⋯。あれか、俺は着ているところを見るのは初めてだから、感想を言えってことか。
「あー⋯⋯。やっぱり似合ってるな。流石俺の見立てだわ」
「その服見つけたのわたしですけどねー」
照れ隠しで言った一言に、一色はシラッとした目をして突っ込んでくる。まあ確かにそうなんですけどね。
「え⋯⋯? あ、うん⋯⋯。ありがと」
しかしちゃんと褒めたというのに、由比ヶ浜のもじもじはおさまっていなかった。いや、さっきから本当になんなの君。
「ヒッキー、あの⋯⋯。あんまり見られると⋯⋯ほら、あたしスッピンだし⋯⋯」
「へ? あ、あぁ⋯⋯」
そう言えば風呂上がりってことは、そうなるのか。生足⋯⋯じゃない、格好の方ばかり見ていて気づかなかった。
由比ヶ浜はそう言うが、言われてしまえば気になってより見てしまうというもの。見上げればお団子頭はただのセミロングになって、しっとりと僅かに濡れている。ギャルっぽさはどこかへ行って、その顔はいつもよりずっと幼く見えた。
何というか、派手さ成分が消えた代わりに美少女成分が増えた感じだ。つまり可愛い。これは正直に言って──。
「いい⋯⋯」
思わず呟いた言葉は、ドーラ一族の息子が料理上手な女の子に一目惚れしたみたくなっていた。
いやこうしていないと可愛くないのかという話だが別に普段からも可愛いと思ってるけどってちょっと待って何考えてるの俺?
「⋯⋯え」
「は?」
そして由比ヶ浜も一色も、そんな一言を都合よく聞き漏らしてくれる耳は持ち合わせていないらしく。
由比ヶ浜は赤面して固まり、一色は「マジかこいつ」とでも言うような表情で俺を見てくる。
「い、いいお湯だったか?」
「いや先輩すっごい誤魔化し方しますね⋯⋯」
我ながら無理のあるはったりに、流石の一色も引いていた。引かれ上手の八幡くんに死角はない。いや死角しかなかった。
一色は顔を赤くしたままの由比ヶ浜に顔を寄せると、何やらヒソヒソと話しだす。いつもみたいに細々と聞こえてくるわけでもないところがガチっぽくていたたまれなかった。ええ、全部俺が悪いんですが。
しかし普段とのギャップで萌えてしまうのは仕方がないと思うのだ。こっちの方がいいとは言い切れないが、こういう由比ヶ浜だっていいじゃないか。うん、いい⋯⋯。どうでもいいけどリアルで萌えって言っちゃうやつはおっさん認定不可避だと思いました。
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