ハーメルン
トレセン用務員のおっちゃん

「よしスペちゃん、あと5回で休憩ね」
「はいっけっぱるべぇぇ!!」

なし崩し的にチームスピカに顔を出す事になってしまったヒビキ、あの後スピカの部室に顔を出したのだがそこにいたゴールドシップやダイワスカーレット、そのライバルでもあるウオッカ、そして本当に移籍していたサイレンススズカも驚いたような顔で此方を見つめていた。がそれは本当に僅かな間で次の瞬間には本当に嬉しそうにしながら絡んできた。好ましく思われているのは良いのだが……何とも面倒な事になったなぁと思いながらもスペシャルウィークのトレーニングを行っていた。

「やっぱり朝の空気って気持ちいいですね!!キリっとしてて目も覚めますし」
「そうだよね、これが好きで俺も早起きしてるようなもんだからね」

嬉しそうな顔をしながらヒビキの指導を受けているスペ。初日の触れ合いや優しさ、器の大きさなどを感じてこの人に担当になって貰いたいと思う程度には惚れこんだからだろう。そんな響鬼はスペにはリギルの選考レースの邪魔をしてしまった負い目もあるのでトレーニングを見ている……が、この先はスピカの面々も見なければいけないという事を考えると少しばかりため息が出る。

「んじゃ次は……仕上げのランニングだね、朝ごはんの前に最後の汗をかこうか」
「はいっ!!これだけ動いた後だときっとすごい美味しいんですよねご飯!!」
「その意気その意気、んじゃ行こうか」


「ほらほらっ足が乱れてるよ~疲れてるのは分かるけどペースは一定」
「はっはい~!!!」

スペシャルウィークは嬉しかった。トレセンに入ってこの人に見て貰いたいと思っていた物の矛先であったヒビキに指導をして貰える事が、チームスピカの皆も凄く喜んでいた。その時に聞いたがヒビキはトレセン内では凄い人気を誇る用務員であると。用務員としても優秀だがそれだけでは人気にはならない。

トレーナーとの関係に悩んだ時に気軽に相談出来る相手、落ち込んで居る時に声をかけてくれて有難かった、休日なのに遊びに付き合ってくれた、苦手だったダンスの特訓に付き合ってくれたなどなどウマ娘たちからすればこれ程心強く有難い存在は中々いない。そして器が大きい上に大人の魅力に溢れていてイケメンという年頃の乙女ならばときめく要素だらけの用務員。それが人気の秘密だと言う。

「はいラスト~」
「頑張りますぅ!!」
「頑張るのはいいけどペース一定ね~おじさんついて行けないから」
「すっすいません!!」

確かにそれには同意するが……それ以上に凄いのはヒビキの身体能力ではないだろうか。自分は本気で走っている訳ではない、あくまでランニング。だがその速度は普通の人からすればかなりきついランニングに入って走り続けるのは辛い筈なのに、平気な顔をしたまま自分の後ろについている。

「鍛えてますからっシュッ」
「何も言ってませんけど!?」
「聞きたそうな雰囲気してたから」
「(お母ちゃんヒビキさんって本当に凄いです、やっぱり私ヒビキさんにトレーナーになって欲しいです!!)」

そんな思いと共にゴールを切った。流石に疲れたのか多少なりとも息が荒くなっているのだがヒビキは全くそんな事はなくふぅ……と一息つくともう何ともなかったかのようにお茶を飲み始めた。如何言うスタミナをしているのだろうか……。

「あのヒビキさんは何で大丈夫そうなんですか、全然苦しそうじゃないですけど」

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