第十六頁[暗黒の力、ギガノイド]
「絆の証として贈り物をするんだ、それはきっと大切な思い出になる。しかし死んでしまえば哀しみの象徴になってしまうだろう。だから次の、その次も、ヤツらのせいで色を奪われた人々のためにも……勝って生き残らなければならなくなるんじゃないか?」
「なんというか……不思議な考え方ね?」
「こうなったのはお前たちの仕業だがな。きっと、昔のオレなら死んででもヤツらを倒す事に固執しただろう」
そんな風に言葉を紡ぐ紫乃の表情は、その紫色の瞳は、どこか晴れやかな光を宿していた。
彼の眼に思わず見惚れてしまい、ロゼは息を呑んだ。
「お前が生きていても良いと言ってくれたから、オレは少し変われたんだ」
「……!」
「本当に心から感謝している」
「そ、そう! こちらこそ感謝してるわ! えっと、じゃあその……中に入りましょうか!」
紫乃の笑顔を見て慌てふためきながらそう返し、二人は肩を並べて入店する。
店内には様々な銀細工の綺麗なアクセサリーがあり、特にネックレスが多く見られた。
その中でもロゼが心を奪われたのは、太陽と三日月の意匠が施されたリング状のものだ。
「リングにお名前を刻印する事もできますよ」
店員からそのように言われ、ますますロゼはそれが気に入った。
紫乃も同じらしく、二人の名前を刻むように伝える。
そして受け取った太陽の方を紫乃が、月の方はロゼが首から提げた。
「ね、行雲くん」
ショッピングモールを出るなり、振り返ってロゼが話しかける。
「なんだ?」
「えっと、その……これからは、ね。紫乃くんって呼んでも良いかしら?」
「別に好きに呼べば良い」
「良かった。じゃあ……紫乃くん。今日は本当にありがとう、大切にするから」
僅かに濡れた瞳と、夜風になびく長い髪。
そしてほんのりと赤く染まった頬が、照れた彼女の笑顔が、何より心からの嬉しそうな言葉が。
ほんの一瞬、紫乃の時間を止める。
「――あ、ああ。それは良かった」
僅かに返答に間が空いた事を訝しむロゼだが、紫乃がまるで顔を見せまいとするかのように先を歩いてしまったので、慌てて後を追う。
その紫乃の方は、徐々に熱くなっていく自分の顔と高まる胸の鼓動に、困惑していた。
「……なんだ、この感じは。オレはどうしてしまったんだ……?」
※ ※ ※ ※ ※
同じ頃。
緑色の微光が灯る奇怪な洋館の中で、ふたつの影が踊るように工房のような部屋の中に入り込む。
ロッソとヴェールだ。彼らの視線の先には、黄色いサフランの花のような装飾がされた剣を手入れしているカリオストロの姿がある。
「伯爵様、ただいま戻りました」
「ごめんなさーいカリオストロ様ー! 色切れ起こしちゃった!」
兄の方は申し訳無さそうに一礼し、妹はどこか馴れ馴れしくそう言った。
カリオストロはというと、別に怒るではなく、むしろにこやかに笑みを浮かべて応対する。
「おお、我が愛しのホムンクルスたちよ。成果は聞いているよ。仮面ライダーを追い詰めたようだね。君たちを教育したアダンくんも、きっと鼻が高い事だろう」
「はい……しかし」
「分かっているとも、エネルギー消費にはまだ改善の余地がある、近い内に調整して解決しようではないか」
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