ハーメルン
仮面ライダームラサメ
第二頁[青き氷海に舞う忍]

 帰路についていた駿斗と若葉に襲いかかった、二体の異形の怪物。
 人食いの化け物に殺されるかと思われたその時、彼らを助けたのは、かつて駿斗の命を救った仮面の少年だった。
 そして倒されたツチグモによって明らかとなった素顔を見て、駿斗たちは驚愕する。
 その正体は、髪の色こそ違うものの、学校で会った新入生の行雲 紫乃なのだ。

「あ、あの~……」

 戦いの後、駿斗と若葉は紫乃に連れられ、ケガを治療された上でマイクロバスに乗っていた。
 あれから紫乃と同じ軍服と形の異なる仮面を着用した人物が何人も駆けつけ、ヒヒとツチグモの遺骸を処理し、瞬く間に公園の荒れた状態を元に戻したのだ。
 そればかりか、今こうして車を用意して半ば拉致のような事をしている。
 リムジンのような内装の広くゆったりとした空間の中、駿斗は恐る恐る挙手すると、今は黒髪に戻った紫乃に問いかけた。

「君は紫乃くんだよね?」
「そうだ」
「僕らをどこに連れて行こうとしてるの?」
「オレの所属する組織の拠点だ。少しばかり付き合って貰う」

 組織という単語を耳にして、駿斗と若葉の顔が青ざめる。
 怪物と戦う事ができ、さらに容易く街の破損を隠蔽する工作技術。二人とも、怪人以上に恐ろしいものに関わってしまったのではないかと思い始めていた。

「紫乃くん、君は一体!?」
「ていうかあたしたちをどうする気!? まさか口封じに殺したりなんか……」

 堪え切れずに若葉の口走った言葉で、ますます不安になる駿斗。
 しかし紫乃は、慌てる様子もなくゆっくりと頭を振って応対した。

「口止めはさせて貰う事になるだろうが、お前たちに危険が及ぶような状況にはならない。オレたちはそんな事のために存在しているのではない」
「ほ、本当に?」

 黙って頷く紫乃。それを知って幾許か冷静になったのか、二人とも安心して息をつく。
 思えば、本当に口封じのために命を奪うような組織であれば、最初から紫乃が駿斗たちを助ける意味などない。当たり前の話だ。
 命の恩人を疑うような事をしてしまった己を恥じ、駿斗が俯く。それを知ってか知らずか、紫乃は特に怒るでも叱責するでもなく、ただ座って外を眺めている。
 そしてそんな空気のまま、車の動きが止まった。

「目的地に到着した。降りるぞ」
「う、うん!」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:0/10

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析