ハーメルン
仮面ライダームラサメ
第三頁[燃えよ、赤き翼]

 紫乃がラタトスクとミノタウロスを討伐した、翌朝の事。
 今まで通り、紫乃は磐戸高校の通学路をゆっくりと歩いていた。
 その道中、騒がしい足音と共に、背後から「おーい!」という元気な声が聞こえて来る。
 振り返ってみると、そこにはやはり若葉と駿斗が並んでいた。

「またお前らか」

 嘆息し、紫乃は若葉に向かって目を細める。
 すると一緒に走らされていた駿斗が、ぜいぜいと息を切らしつつ頭を下げた。

「ご、ごめんね」
「別に謝る必要はない。オレに何の用だ」

 隣を歩く二人を横目に、紫乃が言う。
 若葉は片手を上げてにこにこと上機嫌に笑いながら、紫乃に話しかけようとした。

「この間LOTで……むぐ!?」

 その寸前、紫乃の右掌が素速く動いてグッと若葉の口を塞ぐ。
 無表情な彼だが、その目つきは明らかに険しい。非難するような視線を若葉に送っている。

「外で軽々に組織の名前を出すんじゃない。誰が聞いているか分からないんだぞ」
「あ、あはは……そうでした」

 声を抑えて話す紫乃の手から解放されると、若葉は咳き込みつつ誤魔化すように笑う。
 そして、改めて紫乃へと質問した。

「向こうで聞き足りなかった事があるんだけど、遺物(ロスト・テクノロジー)って何?」

 ふむ、と紫乃は思索するように歩きながらこめかみに指を当てる。
 明かしても良い情報なのかどうか、どこまで話すべきなのか、考えているのだ。
 そして結論が出たのか、すぐに人差し指を離し、周囲で聞いている者がいないかを確認してから二人の目を見やった。

「まぁこのくらいは問題ない、話そう。遺物というのは……例えば、そうだな。お前たちも『草薙剣(クサナギノツルギ)』という名前は聞いた事があるだろう?」

 言われると、若葉はすぐに楽しそうに笑顔を浮かべて反応する。

「そりゃもちろん、知ってる知ってる! ゲームとかで有名な伝説の武器だよね!」
「というか日本神話ね……スサノオが退治したヤマタノオロチの尻尾から見つかった剣で、三種の神器のひとつだよ」

 補足を入れた駿斗の言葉に頷くと、紫乃はそのまま足を動かしつつ話を続ける。

「遺物はそういった、古の物語や伝承の中で語り継がれている武装あるいは道具などの事を指す。神器やオーパーツとも呼ぶものだ。現代では製法が遺失し、完全な再現が不可能となっている。かの有名なアーサー王伝説の聖剣もその類だ」
「だからロスト・テクノロジー、失われた技術か……」

 そうだ、と呟いて紫乃が首肯する。これは即ち、草薙剣に伝わる逸話が事実であり、同じような伝説の剣が他にも実在しているという事を意味するのだ。
 直後に忠告のため、再び紫乃の口が開かれた。

「ハッキリ言っておくがこれらの中には戯我以上に危険な物品も多い、万が一見つけたとしても絶対に触れるなよ。たとえそれが、贋作だと分かっていたとしてもだ」
「えっ、贋作って偽物って事でしょ? それは大丈夫なんじゃないの?」
「偽物なのは確かだ。しかし、もし魔術的な儀礼によって力を施されたものであるならば、贋作と言えど危険には違いない。それは謂わば『本物の贋作』だ。だから誰であれ気安く触れてはいけない……まぁ、中にはその危険物を利用しようと企てる輩もいるが」

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