第九頁[這い寄る緋き陰謀]
「あぁ、これで四鬼も失敗だ。封魔司書ども、まさか二度も俺様のプランを邪魔しやがるとはなぁ」
夜、磐戸市内のとあるビルの屋上で、壁偽を預けてN-フォンを使って通話をしている人物がいた。
赤茶色の髪で、迷彩柄のズボンを穿いた無精髭の目立つ男。
以前テスカトリポカを蘇らせようとした信奉者に協力し、そして用済みとして彼を殺害したあの男だ。
四鬼とは即ち金鬼・水鬼・風鬼・隠形鬼の四体の戯我。彼らにヤマタノオロチの骨杭を渡したのも、この男だったのだ。
「そうだな。これ以上妨害されるのは面白くない……」
二言三言と通話相手と言葉を交わした後、男は壁から離れる。牙を見せつけるような、凶悪な笑顔で。
「今度は俺様が直々に出向いてブチのめしてやるよ」
愉快そうに言った後、男は自分の右手に握っていたものを見下ろす。
それは、巨人の姿が描かれたモンストリキッドだった。
※ ※ ※ ※ ※
鬼たちによるヤマタノオロチ召喚を防ぎ、洪水を阻止してから数日。
放課後、すっかり平和が取り戻された磐戸の街にある磐戸高校で、紫乃とロゼの元にまたも来訪者が現れる。
「やぁ、紫乃くんとロゼちゃん」
「やっほー! 一緒に遊ぼうよ!」
駿斗と若葉だ。いつものように彼らのいる教室に足を運んで来たのだ。
ロゼは華やかな笑みを返すが、紫乃はあからさまに眉をしかめる。
「何の用だ」
「えっと、紫乃くんが今は特に重要な任務に関わってないって安倍さんから聞いて。だから折角だし遊びに誘おうかと」
「あいつめ……」
深く溜め息を吐き、頭を片手で押さえて首を横に振る紫乃。
そこへ、ロゼがクスクスと笑いながら彼に声をかける。
「良いじゃない、藍原支部長も弓立さんも『休める時は休め』と言っていたでしょう? ここは先輩方のお言葉に甘えて、羽根を伸ばすのはどうかしら?」
「しかしだな」
「後でお礼にパフェ奢るから」
「そこまで言うなら仕方ないなよしすぐに行くぞ」
紫乃は即答し、すぐさま駿斗と若葉の後ろに移った。
ロゼは呆れつつも微笑むと、そんな紫乃の隣に並んで歩き出す。
「それで、一体どこへ行くつもりだ?」
「うーん……紫乃くんは何がしたいかな? 普段何をして遊んでるの?」
駿斗に尋ねられると、紫乃はピタリと立ち止まって腕を組んで考える。
「普段している事……趣味、と言う事なら読書だが」
「うーん、みんなで遊ぶとなるとそれはちょっと違うかも」
「ならば映画鑑賞……いや、今は気になるものが特にないな。そもそも映画館に足を運んで見ているワケでもない」
「ちなみにいつもはどんな映画見てるの?」
「過去に話題作と呼ばれていたものばかりだ。最近見たのは『ゾンビヤクザvsドラキュラギャング』だな」
「ゾンビヤクザシリーズ!? 意外なところ見てるね!?」
「名作だったぞ」
「しかもかなりハマってる!?」
その後も悩むが、やはり紫乃からは先の二つ以外の答えが出せない。
「そもそも他人と遊んだ事が全くない」
「うーん、それかなり重症だね。何かやりたい事はないの?」
「……思いつかない」
「そっかぁ……」
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