ハーメルン
生徒会長が栞子なのは間違っている?
第一二幕「姉との再会」

「よう、ブラザー。久しぶりだな」
「……冒頭が急なんだが」
「何言ってんだ。お前が事故って意識不明。ここはお前の夢の場面。今日未明、久しぶりに登場の姉だ」
「韻を踏むな韻を……だけど、なんか思い出したわ。栞子は無事か?」
「お前のおかげでな。だが、まさか学園内に居眠りの車が突っ込んでくるなんてとんだ災難だったな」
「結構俺今ピンチなのにそんな感じしねぇんだけど」
「大丈夫だ、命に別状は無い。それに、どっか怪我したら彼女さんが世話してくれるだろ?」
「彼女じゃねぇけどな」

 そんな軽い会話をしているが、俺の立っている場所は真っ暗な闇の中だった。ここは何処だと考える暇もなく、声が聞こえ、見るとそのにいたのは門城春香。
 我が最高に最愛の姉。そしてその姉は、俺の過去の因縁である林檎ジュースを飲んでいた。

「身体は丈夫らしいから問題は無い。ただ、頭を打ったな。意識不明だ」
「分かったよ……んで、姉さん。何でいるんだ。正直姉さんに会えて涙が止まらなくなりそうなのに、なぜか泣けねぇんだが?」
「お前がまだ、私の死を受け入れてないからだろうな。おい、蝶。お前に伝えたい事がある」
「……なんだよ」
「私の事は忘れてしまえ」

 そんな事を真剣に言う春香。

「無理だろ。俺の我儘で姉さんは命を落とした。たかだか林檎ジュース1つで、されど林檎ジュース1つで、こんな事になった。それに落ち目を感じないほどクズになった気は無い」
「それが普通だな。でも考えろ、過去に囚われすぎて、今お前の目の前にいる最愛の人を蔑ろにするのもクズに近いと思わないか?」
「……栞子か」
「確かにあの子は私に似ている。だが、あの子が言ったように、あの子は私では無い。お前がそれをわかってあげられないでどうする。あの子は……栞子ちゃんはお前を見ているのに、お前は栞子ちゃんを見てないだろ」
「……その通りではある」
「それにだ、私はヘマをして事故で死んだ。まぁ、それも居眠りの運転手の馬鹿のせいだがな。だが、お前を恨んだ事は一度も無いぞ」
「……どうして」
「寧ろ私が申し訳ない。最愛の、たった一人の弟の願い一つ叶えられずに最悪なトラウマを植え付け、泣かせてしまったんだ。本当のクズは私の事だろう」
「違う! 姉さんは悪くねぇんだ! 俺が無理を言って……そのせいで」
「なぁ、蝶。私はな、お前が心配だったよ。私がいなくても自殺しないかとか、生きられるかとか。色々不安だった。でも、お前は前を向いて、友達を作って、なんなら好きな人も作った。青春をしているお前を見て私は安心してんだ」

 友達。それはきっと宮下さんやせつ菜さんの事を言っているのだろう。
 そして、好きな人は……それを考えた時、頭の中に一人の人物が思い浮かぶ。ショートヘアーで髪飾りをつけた八重歯が特徴の真面目で、真っ直ぐで、俺の事を想ってくれる。異性として最愛の彼女の姿が。

「蝶、無理に全てを忘れろとは言わない。ただ、彼女を泣かせるな。お前の下らない考えで、彼女を自分から遠ざけようなんて思うな。いいか蝶、私は、門城春香は死んだ!」
「っ!」
「だから私の事は忘れろ! 死人に口なしだ! お前はお前の幸せだけを考えろ! 誰かを幸せに出来るかとか、守れるかとか、そんなもの後回しだ! 現にお前は、彼女を庇えたんだ。栞子ちゃんを守ったんだ。胸を張れ、そして、彼女と進め。それが例えイバラだろうが、闇だろうが、桃色だろうが、ピンクだろうが、お前は栞子ちゃんと幸せになるんだ!」

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