ハーメルン
少女の万華鏡は純金を生む ~隠された世界の真実に気づいた青年は、少女に殺しを誓う~
1-8. 指導の応酬
「はい、こんにちは!」
達也はキツネのお面をして上空から彼らに声をかける。
「な、なんだお前は!」「俺たちを日本に返せ!」
口々に罵声を浴びせかける不良たち。
「君たち、イジメをしているね? いかん、いかんなぁ。よって制裁を受けてもらう」
「イジメ? 何を言ってんの? あれは指導よ! 礼儀を知らない連中に社会って物を教えてるだけよ!」
主犯格の女が喚いた。罪の意識が全くないらしい。人として大切なものを失ってしまっているのだ。
達也は首を振りながら肩をすくめる。
そして、大きく息をつくと言った。
「指導、指導か、いいね。では、今度は僕が君たちを指導してやろう」
達也は主犯格の女の、脳の痛みを感じる部位『視床』に唐辛子のエキスをワープさせ注入した。
ぐぎゃぁぁ!
女は絶叫しながら白い砂浜の上を七転八倒しながらのたうち回った。今まで感じたことも無いような激痛、それこそ全身を切り刻まれるような、熱湯にぶち込まれるような激痛を味わっているのだろう。
「イジメをすると手痛いしっぺ返しが待ってるという『指導』だよ、よく見ておきたまえ」
周りの不良たちは真っ青な顔をして、苦しみもがく女をただ見つめていた。
しばらくのたうち回っていた女だったが、徐々に落ち着きを取り戻し、やがて砂まみれのゲッソリとした顔で上空の達也をにらんだ。
「さて、ゲームをしよう。今後君たちにひどい目に遭わされたという報告がネットで上がる度に全員に今の十倍の痛みをプレゼントしよう」
「ぜ、全員!?」「十倍!?」「はぁっ!?」
不良たちは呆然としながら達也を見上げる。
「い、今のだって死にそうなのに十倍なんて確実に死ぬわ! 人殺しよそんなの!」
主犯格の女が喚く。
「イジメを苦にして自殺者が出たらお前らも人殺しだ。分かってて言ってる?」
達也は語気に怒りをにじませながら言った。
不良たちは渋い顔でお互い顔を見合わせる。
「あのぉ……」
小柄な気の弱そうな男が手を上げる。
「何だ?」
「僕、彼らのパシリなんです。イジメがあったとして、彼らと同じように罰されるのは……そのぉ……」
「ふむ、それであれば君には彼らの監視役をやってもらおう。彼らの暴力行為がちゃんとネットで報告されるように周りの人に周知徹底しろ。漏れがあればお前に罰が行く」
「わ、分かりました」
すると近くにいた女が喚く。
「てめぇ! 何一人だけ抜け駆けしてんだよ!」
直後、その女は『ぐぎゃぁぁぁ!』と、絶叫しながら気を失って失禁し、ビクンビクンと
痙攣
(
けいれん
)
しながら砂浜を転がった。
「見たまえ、これが十倍だよ」
達也はうれしそうに言う。
周りの者は皆、さぁっと血の気が引き、言葉を失う。
「お前ら、二度と人を傷つけないと誓え! 分かったか!?」
達也は叫ぶ。
「は、はい」「わ、分かりました」「そうします……」
不良たちは渋々答える。
「それじゃ、十倍、行ってみよう!」
達也は右手を高く掲げた。
「えっ!?」「ちょっと待って!」「いやぁぁぁ!」
うろたえる不良たち。
直後、断末魔の悲鳴が一斉に響いた。
ぎゃぁぁぁ! ぐはぁ! ぎゅわぁぁ!
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