ハーメルン
悪事を働かない、あくタイプ使い
悪事を企てない、あくタイプ使い



 さて、今日行われたベトベトンvsスリーパーの試合の行方だが、〝ヘドロウェーブ〟を突破したスリーパーによって、渾身の〝きあいだま〟が放たれたのは『本体』を真似た体の一部であった。その後、背後からの〝かみくだく〟によって、スリーパーは戦闘不能となる。

 スクール入りたての幼児から、学年のエースまで。誰1人として一切勝ちを譲らなかったギガンに対し、バルディアも善戦したものの、その結果は惜しくも一歩及ばなかった。


「………ありがと」


 バルディアの唐突なその一言に、ギガンはいつもの調子で笑い、「何のことだァ?」と声を漏らすと、ほんの少しだけ、間を置く。


「…──悲しいが、その見た目や生態、タイプや過去の出来事から、偏見を受けちまうポケモンが居ンのは事実だ。丁度、俺様のベトベトンを見てあいつらが逃げ出した様になァ」


 ギガンの言葉を聞き、バルディアは僅かに目を伏せた。
 さいみんポケモン・スリーパー。彼女の相棒であるそのポケモンは、過去に起きた誘拐事件などの影響から悪印象を与えられ、気分を害される様な仕打ちを受けたことが多々あったのである。


「だが、ククク…! 外野なんざ好きに言わせておけ。今日みてェな熱いバトルを見せてやれば、テメェらに対する認識なんざあっという間に覆るだろうからなァ…!」


 獰猛な笑みを見せるギガンに、バルディアは少しばかり照れ笑いを浮かべる。気付かないふりをしていただけで、陰で自分たちがどんな風に言われていたか、それを知っていた彼女にとって、その言葉は心の底から嬉しさを覚えるものだった。


「俺様はもう行くぜ。縁があれば、またどこかで会うかもなァ、ククク…!」
「──その時は、ポケモンバトル! 今度は負けないよ!」


 楽しみにしておくぜ。

 その言葉を最後に、ギガンはスクールを去って行く。
 バルディアは、彼の背中が見えなくなるまで手を振り続けた。

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